逃げのびた先でも、花は咲く
どんなに自分で歩きたくても、歩けない。女子教育の場をつくりたいと願っても、国外に逃げなければならないほどの迫害を受ける。
それでも「神様はよいお方」といえるジュリーは、自分自身の運命を受け入れていたのでしょう。
しかし、そんな彼女であっても追い詰められた状況では、「逃げる」という選択肢を行使しました。
弾圧に対して無理に抗うことをせず、「私のしたいことは違う場所でもできる」と、祖国のフランスから逃げて、ベルギーでみずからの思いを現実にしたのです。
中学入学後、はじめてジュリーの一生を知り、私は大きな衝撃を受けました。
真正面から困難にぶつかるのではなく、あえて自分のいる場所を離れることで生きていく道もあるのだと知ったからです。
だが、進む道は自分自身で探すしかない
高校時代、私自身も息苦しい状況から抜け出したくて、自分の居場所から距離を置いたことがあります。当時、両親との関係に悩みを抱えていた私は、自宅にいる時間を減らすために、放課後や休日になるとご縁のあった教会に入り浸ったのです。
この教会の出会いや経験がなければ、今の人生はないといってもいいでしょう。
正直な話、10代の頃は、「神様はよいお方」という言葉がピンと来ませんでした。
しかし20歳で洗礼を受け数十年を経た今は、こう考えます。
どんなときも必ず神様から見守られている。だからなんとかなるのだ、と。
時には、意に添わぬ状況を受け入れなければならないこともあるけれど、視点を変えれば、道は必ず与えられるのだと。
ただ、ジュリーがそうしたように、進む道は自分自身で探すしかありません。
その道を探すためにも、自分を傷つけたり悩ませたりすることからは逃げていいのです。「逃れる道」は必ず備わっているのですから。
●著者プロフィール
神垣しおり(かみがき・しおり)さん
ノートルダム清心中・高等学校 元校長/
NGOサラーム(パレスチナの女性を支援する会)代表
広島県出身。ノートルダム清心中・高等学校卒業後、広島大学教育学部在学中に、香港大学人文学部留学を経験し、国際協力・支援も志す。広島市立中学校教員(臨時採用)を経て、1983年よりノートルダム清心中・高等学校社会科教員として勤務。仏教大学通信制により、宗教科の免許取得後、2004年より宗教科も担当。渡航した友人の後方支援としてNGOを立ち上げ、約30年間、パレスチナの女性が刺繍した製品販売を支援する活動にかかわる。(ノートルダム清心中・高等学校校長を、2024年3月に任期満了で退任)
『逃げられる人になりなさい』
著者:神垣しおり
飛鳥新社 1,540円(税込)
学力と品格が両立する名門女子校の教えとは? 『置かれた場所で咲きなさい』の著者(シスター渡辺和子)の教えを受けた、ノートルダム清心中・高等学校の元校長・神垣しおりさんが、これからを生きる女性たちに48のメッセージを贈ります。
写真:Shutterstock
構成/金澤英恵
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