「希望」と「守るべき存在」は人間の生きる力となる

本作を観て強く感じたのは、どんなに絶望的な状況の中でも人間にとって生きる理由となるのは、「希望」そして「守るべき存在」があるということ。

ヨンギュには、お金を貯めていつかオランダに行くという夢があり、妹のハヤンという守るべき存在もあります。これが絶望の中でもヨンギュの確かな心の支えとなっているのです。

裏社会の男になった、傷だらけのソン・ジュンギ。「悪いジュンギ」に痺れた韓国映画『このろくでもない世界で』_img0
ⓒ 2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

ちなみに本作の邦題は『このろくでもない世界で』ですが、原題は『ファラン』で、韓国語でオランダを意味する単語。母親とともにいつかオランダに行くという夢が、ヨンギュに生きる力を与えているように思えます。

一方で、本物の孤独を背負って生きてきたチゴン。この町にも自らの人生にも希望を一切見出せず、抜け出すことすらできずに生きてきてしまった彼が、ようやく出会った家族のような存在が、ヨンギュでした。

 

絆を深めていくチゴンとヨンギュですが、中盤以降は思わぬ展開に。物語は悲劇へと向かって動き出していきます。そして二人の運命を狂わせる決定的な事件が……。

裏社会の男になった、傷だらけのソン・ジュンギ。「悪いジュンギ」に痺れた韓国映画『このろくでもない世界で』_img1
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ソン・ジュンギが、イケメン俳優の殻を破り、男性たちの“ヒョン”へ……! 

『このろくでもない世界で』では、期待の新人たちの活躍ぶりにも注目が集まっています。ヨンギュを演じたのは、映画初主演の新鋭ホン・サビン。そしてヨンギュの義妹・ハヤンを演じた新人のキム・ヒョンソは、百想芸術大賞で「新人演技賞」を見事に獲得しました。

裏社会の男になった、傷だらけのソン・ジュンギ。「悪いジュンギ」に痺れた韓国映画『このろくでもない世界で』_img2
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そんなフレッシュな顔ぶれの中で、ソン・ジュンギの存在感が作品に絶対的な安定感を与えています。印象に残ったのがソン・ジュンギの最初の登場シーン。後ろ姿の一瞬のカットで圧倒的なオーラを放っており、思わず息を呑みました。

もともとはイケメン俳優としてロマンス系の作品を中心に活躍し、多くの女性にとってときめきの対象だったソン・ジュンギ。もちろん今もその魅力が衰えることはありませんが、最近はプライベートで大きな変化がありました。

2023年1月に再婚を発表。6月には第一子が生まれ、さらについ先日、妻が第二子を妊娠したことが明らかになったばかり。人生の新たな局面を迎えているからこそ、俳優としてもさまざまな挑戦をしているように見えます。

年齢的にも、現在38歳でアラフォー真っ盛り。『このろくでもない世界で』のチゴン役は、まさに今後の俳優人生を懸けた大きなチャレンジだったのではないでしょうか。

目を背けたくなるような暴力シーンも多く、「ソン・ジュンギの美しいお顔や身体が……(涙)」と従来のジュンギファンにはちょっぴり衝撃的な場面が多いかもしれません。しかし同時に、ソン・ジュンギの俳優としての覚悟を感じます!

女性たちにとってのスターとしての地位を築いてきた彼ですが、本作によってイケメン俳優の殻を突き破り、男性たちからみてもカッコよくて頼もしい“ヒョン”としてのイメージも植え付けた……と言えるかもしれません。

※ヒョン=韓国で男性が年上の男性に対して親しみを込めて呼ぶ呼称。

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『このろくでもない世界で』
7月26日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
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『このろくでもない世界で』は7月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開。ぜひお楽しみください。


構成/山本理沙
 

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