世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。
山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
X:@YujiY0402
Podcast:山田悠史「医者のいらないラジオ」
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人間関係をないがしろにしていませんか?
学生時代の友人には、もう何年も会っていない。飲み仲間といえば、仕事の同僚だけ。趣味もなく、ゆっくり家族の時間も持てない……。
仕事や目の前のことが忙しくて優先させてしまうと、そんな風になってしまうのも無理はないでしょう。
あるいは、歳とともに交友関係を広げるのが億劫になり、ついつい同じ仕事の仲間とばかり付き合いを続けている人もいるかもしれません。または、そもそも一人でいる時間の方が楽で、好きだと感じている人もいるかもしれません。
たしかに職場の同僚との人間関係も、一人の時間も、大切であることに間違いはありません。しかし、認知症のリスクという視点で捉え直すと、そういう人、つまり社会的に孤立しがちな人は少し気をつける必要があるかもしれません。
それについて考える前に、少し言葉の整理をしておきましょう。「孤立」はどのような意味を持つ言葉でしょうか。それと似た「孤独」とはどう違うでしょうか。この2つの言葉は区別して説明ができるでしょうか。
「孤立」と「孤独」は実は違う
孤立は社会的孤立とも表現されますが、客観的に社会的な人間関係が全くない、あるいは希薄な状態を指しています。ここに寂しいなどの感情は関係なく、ただ人間関係があるかどうかで判断される言葉です。一方、孤独とはよく「孤独感」とも言われるように、主観的な感情であり、自分の期待する人間関係と現実のそれとの間の差によって生まれるネガティブな感情を指しています。
孤立と孤独はよく共存しますが、常に共存するわけではありません。どんなに多くの家族に囲まれ孤立とは無縁の状況にいても、一番の心の支えであった配偶者や友人を失うことで、強い孤独感に苛まれることもあります。あるいは、一人でいる時間が好きな人は、孤立していても孤独は感じていないかもしれません。
孤立と孤独を混同してしまうと、孤立がなければ孤独はないだろうといった具合に、その個人にとっての重大な問題が見過ごされてしまう可能性があるので、両者の区別は大切です。実際、孤立も孤独も、それぞれ独立して様々な病気のリスクとの関連が知られています。
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