世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。
山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
X:@YujiY0402
Podcast:山田悠史「医者のいらないラジオ」
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家から出ない生活習慣が脳に悪影響を与える
コロナウイルスのパンデミック以降、リモート会議が導入され、自宅から勤務できるようになったという人も少なくないでしょう。これを書いている私も、病院で勤務する仕事はしているものの、会議はほとんど全てリモート会議となり、病院での勤務がない日は自宅でも仕事が完結するようになりました。
リモート会議のみならず、今や食事のデリバリーやクリーニングなどもスマートフォンと自宅でのやりとりで完結してしまいますから、家から一歩も出ない生活をすることも全く難しくなくなりました。とても便利ですよね。怠惰な自分が顔を出すと、私もうっかり「そういえば今日は一歩も家を出なかったな」ということも全くないわけではありません。特に、今の自分のように夢中になって原稿を書いている日は、そういう日であることは容易にお察しいただけるでしょう。
しかし、この「家から出ない」生活習慣、実は私たちの脳に悪影響を及ぼしている可能性があるのです。ここで言う「家から出ない」には様々な切り口がありそうですが、中でも「家を出ないことで体を動かす量が減る」という観点からまず考えていきたいと思います。
座る時間が長いと認知症リスクは上がる
「運動不足は健康に良くない」というのはきっと誰もが知っていることだと思いますが、「運動不足は認知症にとっても良くない」というと、少しイメージがしにくいかもしれません。
体を動かさないことと脳の働きには一体どのような関係があるのでしょうか。
全ての研究ではないものの、これまでのいくつかの研究で、家から出ないで座っている時間の長い生活は、認知症リスクの増加と関連することが報告されています。例えば、25万人分のデータをまとめた研究(参考資料1)では、座る時間の長い人は、そうでない人と比べて、認知症リスクが1.3倍に増加していることがわかりました。
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