遺伝性の卵巣がんにも備えられる時代に
また、岡本先生は卵巣がんや乳がんの遺伝性についても指摘します。
「BRCA1またはBRCA2という遺伝子に異変があると、乳がんや卵巣がんを高いリスクで発症することがわかっています。乳がんは40歳代、卵巣がんは50歳代から発症しやすくなりますので、ご自分ががん家系で心配な方は、遺伝外来で調べておくといいでしょう。
高齢になると、がんのリスクがどんどん高まるので、予防的に卵巣摘出手術をするという選択もあります。ハリウッドスターのアンジェリーナ・ジョリーさんがその決断をしたことは有名ですね。ただ、毎年検査を受けていれば早期発見できる可能性が高まるので、まずは検診を受けていただきたいです」
BRCA1またはBRCA2は、乳がんや卵巣がんばかりではなく、すい臓がん、前立腺がんも高リスクということがわかっています。私は祖父母、母を膵ぞうがんで亡くしています。遺伝子検査をするまでもないですが、リスクが高いとわかったらどうすればいいのでしょうか?
「婦人科も含め、他のがんも含めやはり検診を受けること。今は大きな病院には遺伝子相談外来があるので、そこに相談に行くのが一番いいと思います。遺伝要素は大きいですが、卵巣がんでもBRCA1、2に効くお薬もあります。今後、遺伝診療はより注目されていき、いずれ保険適応になることを願います」
遺伝診療によって自分にフィットした治療法を選択できる時代になっています。自分のリスクを知り、ライフスタイルを整えておくことも、長寿時代のヘルスケアの参考になります。
2人1人ががんになると言われている日本。がんは治る病気というイメージが大きくなっています、それには早期発見が肝心。加齢と共にリスクはあがるので、年に一度の検査は必ず受けておきましょう。
岡本愛光先生
1960年生まれ。 86年東京慈恵会医科大学卒業。 同大学産婦人科学教室助手、国立がんセンター研究所研究員、アメリカ国立がん研究所招待研究員(NCI、NIH)、東京慈恵会医科大学DNA医学研究所遺伝子治療部門講師(兼任)などを経て、2012 年 東京慈恵会医科大学産婦人科講座主任教授
取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣
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