居場所の確保はお金次第?

翔太が小学校に入学したと同時に、3年前、ワンオペが始まった。「お父さんは単身赴任で関西に行くことになった」と告げると、子どもたちはまだわかっていないのか、「そっか~」と少し悲しそうにつぶやいた。

誰にも言ったことはないけれど、母親が働いている幼い子は、さながら「ブラック企業」に勤めているようだと思う。なんせ加奈も翔太も、0歳から保育園に通っている。夏休みも冬休みも保育園と学童で、長期休みとはいえ、平日に家でゆっくりする暇はない。

そんなことを思うのは、私の母が主婦で、自分が学童や保育園に通った経験がないからだろう。「友達がいるから子どもは案外家にいるより楽しいよ」と言ってくれるひともいる。それはすごく救いになった。けれど私自身、とにかく家でのんびりできるのが嬉しかったから、やっぱり罪悪感がある。

雨の日も風の日も、ちょっとくらい調子が悪い日も、加奈も翔太も保育園や学童に行ってくれた。加奈が小4のとき学童に行きたくないと言い出したとき、最初は耳を貸さなかったけれど、よくよく聞いてみれば「仕方ない」理由があった。

働く母が悩む、小学生の夏休み問題…独りで留守番の長女に異変が!?焦る母がとっさに考えたのは…_img0
 

このあたりは、中学受験をする子も多く、4年生にもなると一斉に塾に通い始める。夏期講習があり、高学年では学童に来る子は激減するという。

もちろん受験する子ばかりではない。ただ公園はもはや暑すぎて、家にひとりにしてはゲームやYouTubeを見るばかり。親はどうにかして習い事や英語、スイミングなど「委託先」を探す。

小学生の居場所は、お金を払って確保されるのが、東京の長期休暇のスタンダードなのだ。

蒸し暑い通勤電車のなかで、私は今月の引き落とし額を思い浮かべる。まったく、なんのために働いているのやら。スイミングに、キャンプに、自由研究のワークショップ。昼間の時間をつぶすために課金するというのも本末転倒だ。

 

それでも、加奈は反抗もせず、淡々とそのスケジュールをこなしてくれる子だった。長女で、私の苦労を肌で感じているのだろう。翔太も、不満を口にしても、なんだかんだ学童に通ってくれている。

――なんとか8月末の有給休暇は取れるように、仕事がんばらなくちゃ!

月末には、1年ぶりに旅行にいく。3泊4日、休むのは簡単じゃないけれど、大事な機会だ。頑張るしかない。