「子どもに会いたい!?」


「彼は、あんなに自分勝手に子どもに接していたのに、子どもには会いたいと主張してきました。私は何かあったら心配なので、まずは子どもの気持ちが一番だし、子どもが自分の口でしっかり話せるようになるまで無期限で私が同席すると主張しました。

相談するひともいなくて、私は混乱していたと思います。私に、子どもから父親を完全に奪う権利があるのか? と葛藤がありました。でも、彼が子どもたちの心身を傷つけるようなことは絶対にあってはならない。苦肉の策で、当面は周囲の目があるところで会い、私も同席することを条件にしたのです。

誤算だったのは、子どもが彼に会いたがったこと。とくに娘は『なんでパパいないの?』と時々泣いていて、胸が痛み、2カ月に1度くらい会う機会を設定していました」

祐子さんの葛藤が伝わってきて、筆者も考えこみました。太郎さんは、少なくともカッとなったときに息子さんに暴力を振るったことは間違いありません。しかし残念ながら子どもたちにとっては父親。完全に縁を切るべきなのか、最低限の接点を保ち、太郎さんにも父としての自覚と責任をこの先も感じてもらうべきなのか。祐子さんには、太郎さんと子どもたちとの接点を完全に絶ったら、彼はすべてを忘れて責任を放棄するだろうと考えました。

夫婦の関係性、家族の在り方に正解はないぶん、判断は当事者に委ねられます。ただ、離婚直後という特殊な状況では、信頼できる他者の意見を聞くチャンスが減ってしまう可能性も。悩んだときはできれば親族や弁護士、公的機関など、相談先を意識的に確保することが望ましいのだなと感じました。

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写真:Shutterstock

悩みながらも、2~3カ月に1度は面会を設定していた祐子さん。離婚から1年以上が経ち、養育費は滞っていましたが、会えば腰にコルセットを巻いていて、辛そうなそぶりを見せる太郎さんに、強くは言えないままでした。

しかし面会ための交通費もばかになりません。腰痛持ちの太郎さんのために3人で東京まで移動していましたが、新幹線代が負担となり、子どものぶんを半分出してほしいと交渉しますが却下。次第に面会に行くのが負担になり、間隔があくようになりました。

 

「覚悟を決めて、養育費のことも諦めれば、彼と接点を持つ必要はありません。そのほうが私の心が安定して、幸せでいられます。それに正直、生活するのに必死で、あの人のことを考える余裕がありませんでした。連絡は途絶えるようになりました。

無我夢中で生活をして10年。2人の子どもは高校生になりました。家庭内チームワークがすっかり確立し、家事も分担することができます。一息つくといったところです。

ただ、子どもたちがもし大学に行きたいと言ったら進ませてあげたい。でも貯金をしようにもうまく進みません。教材や部活、修学旅行の積み立てもあり、何かとお金がかかります。苦心していると、子どもたちが奇妙なことを言い出しました。

『お母さん、お父さんはね、結構お金があるんだよ。頼んだら、お小遣いをくれるかも』と」