母の決意


なんと『仕事に支障がでている』と言っていた腰痛に関して、相当大げさだったことが判明します。フットサルやスノーボードに頻繁に行っているので、とても仕事を休みがちとは思えず、怒りで震える心地がしたと言います。

祐子さんは、離婚してからは必死に切り詰めて暮らしました。貯めたお金でお子さんたちを喜ばせるためにごくたまに外食をしたり、年に1度温泉旅行へ行ったり。一方で太郎さんは養育費を払わず、自由に「独身生活」を謳歌しています。

お金がすべてだという気はありませんが、離れて暮らす子どもを支えようという気持ちがあれば、そんな行動はとらないでしょう。父親からの返信を読んだお子さんたちは、相当傷ついていたそうです。

「元夫のSNSを、子どもがこっそり見ていた…!」養育費を踏み倒す元夫の、許せない嘘が明らかになった日_img0
写真:Shutterstock

ここまでお話を伺って、筆者も黙り込んでしまいました。祐子さんは、自分の稼ぎだけで3人家族の生活費や教育費を賄っています。こんなに頑張っているのに、生活は楽ではありません。養育費のことを公正証書に残していれば……。そう思うものの、祐子さんの気持ちも考えると、追い打ちをかけるようなことは言いたくありません。彼女が一番、わかっていることです。

ただ、養育費を受け取れないということは、不利益を被るのは他ならぬお子さんです。不条理に感じて思案していると、祐子さんはゆっくりと背筋を伸ばして頷きました。

「どう転ぶか分からないので、お話しするのを迷いましたが……。今まで目を背けてきたけれど、私、弁護士に相談に行こうと思っています。自治体のひとり親家庭支援課にも。自分なりに調べてみて、こういった訴訟のために弁護士を雇うと普通は50万円から100万円くらいかかると読みました。

赤字になる可能性が高いです。でも、私、こんなに舐められて、足元を見られて、本当に悔しい。自分が無知だったのが悪いんです。傷つきたくないし、忘れるほうが簡単だと思っていました。でも、そのために子どもが苦労したり、あの人の言葉で傷ついたりしているこの状況は不当だと強く感じます。

数回ですが、満額支払われた振込の記録と、取り決めたときのLINEのやりとりは残してあります。SNSもスクショしました。離婚する前にこっそりコピーをした彼の勤務先の給与明細、推定年収、住所……役に立つかもわからない頼りない『物証』ですが、これで支払ってもらえる可能性があるか、さかのぼって請求できる可能性があるか、できる限り相談に行こうと思います」

祐子さんの声には強い意志がありました。長い間踏みつけられ、覚悟が決まったのだとわかりました。

訴えたとしたとしても、うまくいくかどうかはわかりません。でも裏切られて防戦一方だった祐子さんが、子どもの権利を守りたいと強く願い、行動することで何かが変わるかもしれません。

これからの展開をまた取材させていただく日まで、筆者も心より祐子さんとお子さんの健闘を祈ります。

 

取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
 
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