Rくんは都市開発の仕事に就いて、インテリアデザイナーの妻との間に4人の子供に恵まれ、「育児で忙しいけど、かわいいんだ」とお子さんの写真も見せてくれた。ご実家の斜め前の家を購入し、今も小学校の近くの町にそのまま暮らしているそうだ。
Rくんも、「ミキはどうしていたの」「どういう毎日を送っているの」「どうして今の仕事を選んだの」「この先の夢はあるの」と次々と質問をしてくれて、私は自分のことについて久しぶりに語った。
これが凄まじく新鮮で、言葉にできないほど、うれしかった。というのも、それまで数年、そんな風に質問をするほど、
人が自分の話に健全な興味を持ってくれて、自分も相手のことが聞きたくて、大それた内容ではなく、普通に会話が弾むって、こんなに幸せなことだったのか。
そもそも、Rくんが私に会うためにわざわざ飛行機に10時間乗ってきてくれたこと自体、うれしかった。それに、アメリカでは普通のマナーなのだが、椅子を引いてくれたり、ドアを開けて「お先にどうぞ」と言われるだけで、
もう二度と会わないかもしれないRくんとの、一日にも満たない再会のおかげで、私の砂漠のように乾き切った心に水流が戻った。そして、自分が求めていることもはっきりした。
最早、大恋愛とか駆け引きとかがしたいわけではない。互いを尊重し、大切に思い合いながら、親友のように語らえる相手が欲しいのだ。見つめ合うのではなく、肩を並べ同じ方向を見ながら、日常を分かち合いたいのだ。
空港でRくんを見送り、帰途に着くため振り返った瞬間、私は激しくギア・チェンジをした。続きは次回。
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