【新津春子さん】汚れにはその家のストーリーがある
汚れというのはおもしろいもので、そこに住む人の生活習慣やルールまでも読み取れてしまうんです。とくに「玄関」と「トイレ」。この2か所を見れば、その家に住む人がふだんどんな生活をしているのか見えてきます。
玄関とトイレはどちらもその家の顔のようなもの。「家に顔がふたつもあるってどういうこと?」って思うかもしれませんね。さらに言うと、この顔は私たち人間も持っていますよ。どんな顔だと思いますか。
「玄関」は外向きの顔、「トイレ」は内向きの顔です。
玄関は外から、通りすがりでも見ることができます。しかしトイレはいったん中に入らないと見ることはできません。玄関がきれいな建物に入っても、トイレが汚かったらがっかりしますよね。
外向きの顔と内向きの顔……。人間も同じだと思うのです。
羽田空港は「日本の空の玄関口」と呼ばれています。日本から世界へ飛び立つ人々、世界から日本を訪れる人々のための玄関です。世界中の人が日本で最初に訪れる場所であり、日本という国の印象を左右する場所でもあります。その空の玄関口にあるトイレは清掃員が重点的に気をつけている場所でもあります。
日本にやってきて最初に目にする場所にごみが落ちていたり、汚れが残っていたりしたら、日本という国に対する信頼が失われてしまいます。さらには、これから日本を楽しもう! という気持ちもしぼんでしまう気がします。
逆にすみずみまで清掃が行き届いていれば、日本を訪れた人に「日本は清潔で気持ちがいい国」という印象を持ってもらえます。これから日本で過ごす時間がますます楽しみになるに違いありません。
同様に自宅の玄関が靴や小物でごちゃごちゃしていたり、ホコリがたまっていたりすると、家から出かけるときに気分がよくないですし、外から帰宅したときも疲れが倍増してしまいそうですよね。ですから、玄関とトイレは、どちらもきれいにすることが欠かせません。
Comment