男友達は東大出身しかいなかった


美玖さんは謙虚な方で、中高一貫進学校に通っていなければ今の自分はないのだと繰り返します。

一方で、夫の陵さんは附属高校を経て有名私大にエスカレーターで上がったそう。おふたりは社会人になってから、友人の紹介で出会い、ご結婚されたそうです。

写真を拝見すると、陵さんは身長が非常に高く、美玖さんとの差は30cmほど。高校時代はバレー部に打ち込み、いくつもの大会で優勝した経験があるそうです。

「大学受験なんて無意味。息子にはスキップさせて」附属出身の夫の言葉が、元ガリ勉妻にショックを与えた理由_img0
写真:shutterstock

「東大女子と有名私大体育会系男子なんて、なんだかドラマになりそうなご夫婦ですね」と感嘆すると、美玖さんがきゅっと眉を寄せました。

「それがですね……お互いに、ちょっと特殊な青春を過ごしてしまって、学校や環境に関する価値観が極端でした。そのうえ、全く違うことが判明したんです」

詳しく伺うと、陵さんは附属高校でバレーボール一筋。聞けば週7日、長期休みもほとんどなく、部活に青春をささげた様子はさながらマンガ「SLAM DUNK」のよう。その甲斐あって、彼は心技体、非常にバランスの取れた人格者だといいます。人となりを表すエピソードを伺っていると、「SLAM DUNK」ついでにキャプテンの「ゴリ」こと「赤木くん」のような一本気な性格だと感じました。

「私が『大きな目標を定めてから努力しよう』という考えなのに対して、彼は『足元の一歩一歩から』が口癖。毎日のルーティンやコツコツやることをとても大切にしています。私は目標から逆算して作戦を立てたいタイプで、彼は一歩を積み重ねていけば自然にあるべきところに到達すると考えるタイプ。

結婚する前から夫の性格は分かっていて、そこがかっこいいと思って結婚しました。……なのですが、長男が小学4年生になる頃、2人の価値観がぶつかる事件がありました」

ご自身の経験から、お子さんは中学受験にすると決めていたという美玖さん。陵さんも賛成だったといいます。そこで長男は通塾スタート、ほどなくして志望校を決めるために学校説明会にいくことにしました。

 

「話は少し変わりますが、私、男子の友人は大学に行って初めてできたんです。つまりみんな東大生で、おおかた進学校出身です。大学附属男子、という知り合いがひとりもいませんでした。

友人たちは芯が強く、多かれ少なかれ上昇志向でした。時間の使い方も上手で、尊敬できるところがあって。居心地がよく、楽しかったイメージから『やっぱり進学校出身の子は共通点も多くて気が合うなあ』と思っていたんです。

だから息子の受験校も、疑いなく友達の出身校で馴染みがあった男子進学校を選びました。私が男子だったら受けたであろう学校です。

……すみません、ドン引きですよね。世界が小さくて恥かしいんですけど、この後の話に関わってくるので正直に話しています。狭い世界でのんきに生きてきたから、それが下手に東大だったので、あたかもそれで答え合わせをしたような気になりました。進学校に対する妄信に疑いが持てなかったんです」

意気揚々とピックアップした学校を陵さんに見せた美玖さん。すると陵さんの反応は予想外のものでした。