進学校VS大学附属校
「え!? これ大学受験する学校だよね。なんでわざわざ進学校を受けるの? 俺は中学受験はしていないけど、ニュースなんかですごく大変だって知ってる。進学校なんかいって、また大学受験?
しかもこういう高偏差値の学校って、猛烈にやるだろ? ヘタしたら10年くらい塾に行く羽目になる。大学受験なんてシステム上仕方なく存在する選抜。無意味だしタイムパフォーマンスが悪すぎるよ。それよりもっとほかにやるべきことがある。附属に入って、勉強以外の人間活動に打ち込ませよう。これからの時代、ガリ勉をしてほかのことができないまま東大なんて通用しないよ。附属なら人脈もできるし、つながりは一生モノだよ」
筆者も思わずうなりました。陵さんのおっしゃることは一理あるし、反論するにしては陵さん自身がよくできた方でした。大学時代は海外にボランティア活動に行ったり、無料塾の先生をやったりしていたといいます。自分が恵まれているから得られた時間とチャンスを活かして、他者を助けています。また早々に資格取得のために勉強もしていたといいます。
そんな彼に、単純に高偏差値の進学校に行くといい、それが結局は近道なのだと言ったところで響かないのは明白です。
「私はすごくショックでした。正直に言って、進学校以外は考えたことがありません。息子には、大学受験を見据えて勉強しながら、将来の専攻や仕事について6年間じっくり考えてほしかった。
大学附属? びっくりです。最初から東大やほかの大学の選択肢を捨てているということですよね。どっちもどっちの夫婦だと今ならわかるのですが……当時、私は目が点という感じでした」
確かに、答えは水掛け論。どちらかが歩み寄るしかありません。最初は聞く耳を持たなかった美玖さんですが、陵さんも一本気な性格。譲りません。
「俺の同僚で、体を鍛えることもなく、コミュニケーション能力に欠けている人がいて……確かに勉強はできるんだけど、それだけでやっていけるとは思えない。人間はバランスだ」
その言葉をきいて、美玖さんは内心相当反発があったそう。ガリ勉が人間力に欠ける、みたいな論理は美玖さんや仲間を否定するものだと感じました。
しかし半年が経った頃、美玖さんの気持ちに変化があらわれます。しぶしぶながら周囲に意見をきいて回った結果、有名大学の附属校に通っていたという知人が何人かできました。その人も陵さんとまったく同じことを言ったといいます。そして今はそのコミュニケーション力と学歴、そして人脈を活かしてビジネスを展開しています。
――夫も、その人も、その友人も、なんだか幸福のコスパがすごくよさそう……。人生において受験は1回しかしていないのに、有名大学卒の肩書は持っている。私がガリ勉していた間に、いろいろなことを身につけて社会に出てるんだ。
それは美玖さんの正直な感想でした。
素直な美玖さんは、そのことでこれまで興味がなかった大学附属についてさらに調べ始めたといいます。
「進学校でも、東大にいくのは一握り。それならはじめから有名私大附属の入学権を確保しながら、英語や特技を磨いて、資格を取るエネルギーを残しておいたほうがいいのでは?」
そんな気持ちが湧いてきた美玖さん。陵さんに負けず劣らず一本気な彼女は、そこで思い切った行動に出ます。
後編では、陵さんにお話を伺い、夫婦がどのように価値観をすり合わせ、中学受験に挑んだのか、またその結果を伺います。
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
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