東大卒妻の本領発揮
「妻の努力は本当に凄かったです。附属専用の対策塾や家庭教師を探してきて依頼したり、大昔の過去問、いわゆる『過去過去問』を手に入れて万全に傾向を分析したりしていました。そこらへんの徹底した感じがやはり受験の覇者・東大生という感じです。正直、僕はラッキーで高校に受かったと思っているので、こんなに頑張るの? という感じでした」
美玖さんは、入試時期が近づくと面接にピッタリのスーツをオーダーし、さまざまなアイテムを校風にぴったりの雰囲気で揃え始めます。願書も専門の塾で添削してもらう力の入れようでした。
「染まりやすく、素直で勤勉な妻は、いつの間にか大学附属中の信者になっていました。もちろん息子もその期待に応えるべく、頑張っていました。
ただ、志望校のすべてを大学附属にはしておらず、第2志望までを大学の附属・系属にして、第3志望は近所にある進学男子校にしました。正直に言うと、一定レベル以上の大学の附属に拘りがあったんです。
これは僕のなかの矛盾でした。大学附属の環境がいい、全人教育が魅力だと言いながら、どこでもいいわけではなかった。最終学歴として体裁のいい学校の附属であることが前提になっていました」
陵さんは、当時の胸のうちをとても正直に語ってくださいました。まだ中学の段階ですから、可能性に挑戦したいという気持ちはとてもよくわかります。
さて、家族全員が同じ方向を向いた中学受験。しかし結果は、とても皮肉なものだったのです。
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