それに、水季と付き合っていたときの夏って、なんだか少年のような顔をしていませんか? 「次は、どんなことをするんだろう」ってワクワクしながら水季の動向を見守っている。夏に「犬か猫かコアラかハムスターかうさぎだったら? 好きなの」と聞いておいて、「(わたしは)イルカでーす」と言ったり。授業中に鳩サブレーをこっそり食べたり(普通はお土産でもらうはずの鳩サブレーを、自分で買うのがポイント)。
また、水季って常に主導権を握っているんですよね。台風の目のように周囲を翻弄させながらも、自分は飄々としているというか。他人軸で生きている夏には、そんな水季の存在が眩しくて仕方がなかったのかもしれません。
正直、『海のはじまり』のなかで、いちばんヘイトを集めているキャラは水季だと思います。内緒で子どもを産むのなら、夏の存在は隠し通すべきだし、海(泉谷星奈)に夏の家までの行き方を教え込んでいたのも、理解できない。自分の死後、海がパパの存在を知りたくなったときに……と思ったのかもしれませんが、それなら責任を持って夏とやり取りをしておくべきかと。付き合っていたときにいい人だったとしても、別れて何年も経っていたらどうなっているか分からない。それに、新しい恋人(=弥生)がいるのを知っていたなら、なおさら確認しておくべき。なにかあったとき、傷つくのは海です。身近にいたら、しんどいわぁと思いました。
でも、水季を取り巻く男性陣って、誰ひとり水季を恨んでいないんですよね。夏も「あの人、水季、水季ってうるさいですよね」と言われるくらいに、水季のことで頭がいっぱいだし、この期に及んで「嫌いになって別れたわけじゃない」とか言っちゃってる。津野(池松壮亮)も、散々水季に振り回されてきたはずです(特別編の水季、魔性すぎた)。それでも、水季のことを心から愛し続けて、支えてきたって考えると、やっぱり水季ってすごい。
わたしは、弥生に感情移入をしながら観ているので、水季の魅力を知るたび「こんなん、敵わんやん……」と切なくなります。好きな人に“ずっと忘れられない女の子”がいるだけでもしんどいのに、その人の子どもを育てるなんて、相当な覚悟が必要だと思う。それに、夏と海は水季の存在を“共有フォルダ”に保存しているわけで、ことあるたびに2人で思い出を語り合うかもしれません。果たして、弥生はそれに耐えられるのか。「どちらを選んでも、それはあなたの幸せのためです」。かつて、弥生が水季に送った言葉を、今は弥生に捧げたいです。
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