多様性偏重?批判だけでは勿体ない、魅力あふれる俳優陣
一方、シーズン1の公開時、J・R・R・トールキンの原作ファンにとっては納得のいかない設定が話題にもなりました。多様性を重視した配役に対して批判の声が上がったのです。現場総責任者のJ・D・ペインは「色々な意見が飛び交ったのは、原作への愛があるからこそ」と受け止めています。
いわゆる“黒人のエルフ”のアロンディルを演じたイスマエル・クルス・コルドバも批判の声に耳を傾けながら、「私たちはやるべきことをやるしかなかった。仕事に集中し、愛に集中しました」と真摯な姿勢で答えたくれたのが印象的でした。
「アロンディルは情熱的で、気高く、忠実な人物。ご覧になった方がアロンディルと、彼が愛を向けたブロンウィンとその息子のテオの物語に共鳴してくれたことも実感しています」と、前向きに捉えてもいます。そんなアロンディルの役柄に自身と重ねることもあったとか。
日本での知名度は決して高くはない名前が連なりますが、魅力にあふれた演技派の役者たちが揃った作品なのです。
この作品をきっかけにブレイク中の俳優もいます。テオを演じたタイロエ・ムハフィディンです。毎年ハリウッドで最も輝くスターを選出するリスト「Variety's 2022 Power of Young Hollywood」に選ばれ、メンズ・ファンション誌のアメリカ「GQ」誌からはファッションセンスをべた褒めされています。
中身も骨太です。「テオたちは権力の腐敗を目の当たりにする。本来、善のためにあるべき指輪は破壊や悪のための道具にもなってしまう。なぜそうなってしまうのか。人々の姿をつぶさに描いた作品なんだと思うんです」と、作品テーマを深く捉えたタイロエの言葉が物語っています。
レッドカーペットやジャンケットと呼ばれるインタビューも行われたシンガポールのアジアイベントには、シーズン2の主役サウロン演じるオーストラリア人俳優のチャーリー・ヴィッカーズをはじめ、愛されキャラクターのハーフット族ノーリ役のマルケラ・カヴェナー、ノーリの親友ポピー役のメーガン・リチャーズ、高名なエルフ鍛治師ケレブリンボール役のチャールズ・エドワーズ、ヌーメノール摂政女王の顧問官ファラゾーン役のトリステン・グラベルも参加しました。
どの役者からも作品に対する真摯さと自信を感じました。トールキンの世界観を新たなドラマとして作り出していることに誇りを持っているからこそです。既にシーズン1を完走した人はもちろんのこと、気になるもののまだご覧になっていなければ、シーズン2が配信開始されたこのタイミングで見始めるのがベスト。食わず嫌いこそ勿体ない。満足度の高い作品です。
構成/山崎 恵
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