受験を終えて、思うこと


結論からいうと、我が家は第1志望校には届きませんでした。

2月3日、結果が出た日、私と息子は布団にくるまって夜通したくさんの話をしました。

日頃はぼんやりしているように見える息子です。でもこの受験を通してとても成長していたのだと知りました。「ちょっとだけ勉強サボっちゃった日があったのは、俺の弱さだったなあ」とつぶやいていた横顔は忘れられません。

一方の私は、半日前に出た結果に、自分でも予想しなかったほどショックを受けていました。

あと数点だったはず。もしかして社会でど忘れしたというあの答えが書けてたら……。合格させてあげたかった。頑張った数年を、第1志望合格という形で終わらせてあげたかった……。

そんな思いばかりが湧いてきて、いただいた合格に対する嬉しい気持ちをかみしめたいのに、子どもの前で泣かないようにするのに精一杯です。あれほど事前に、「中学受験で第一志望に合格できるのは3~4人に1人。不合格のときこそ親の真価が問われる」と取材できいていたのに。ダメ親すぎる……!

でも息子は、入試が終わったあとで立ち寄った塾で、お世話になった先生の前で泣いたあと、すっかり落ち着いていました。そして「悔しい。正直、競り負けた。でも同じくらい難しいと思っていた学校に合格できてすごく嬉しい。
……俺、マジ頑張った!」と。

そう、君はマジ頑張った……!

その一言で、私はどれほど救われたでしょう。そして、第3志望校に進学して、結果オーライ、母校大好きと思っている自分の経験を思い出しました。

息子が眠ったあと、夫が「彼、すごいね、成長したね。いい経験をしたんだなあ。きっとこれからの糧になるね」と言ってくれました。

そう、そうだった。中学受験は、残酷なくらいあっさり、1回の試験で結果がでる。そしてそれさえも人生のひとつのスタートラインに過ぎないのだと。

成長するということは、己を知るということ。自分の未熟さを客観的に知ることです。そういう意味で、親の私も成長できた1年でした。

そしてちょっと感傷的ですが、12歳にとって、それは大きな試練。息子は中学受験を通して成長できたけれど、もう少し先でもよかったかもしれないね。私が始めさせた中学受験、期待を背負って最後まで駆け抜けてくれてありがとう。辛い時期もあったけど、ミラクルをたくさん見せてくれてくれたね。

それはとてもしんどくて、でもかけがえのない貴重な体験でした。家族で一緒に喜び、一緒に泣いた日々。

教育ライターの中学受験伴走記③「受験を勧めるかと言われれば、正直...」わが子の受験を終えて感じたことを告白_img0
 

息子は今、初めての運動部と英語の勉強に四苦八苦しながら、楽しそうに学校に通っています。先生やお友達に恵まれて、毎日一生懸命。それはまさに息子に手に入れてほしかったものです。

それでも正直に言って、誰かに「中学受験、最高だよ! 絶対やったほうがいいよ!」と手放しで言うかと自問自答すれば、難しいところです。時間もお金もたくさんかかる可能性が高いですし、こればかりは本当に家庭の考え方次第。

そしてそれとは別に、中学受験という選択肢があったこと自体は幸運だということを息子に知っていてほしいなと思います。挑戦できたこと、勉強や部活に打ち込めるという環境がとても恵まれていることは、親子で忘れてはいけないと強く思います。頑張ったことは素晴らしい。同時に、頑張れるチャンスがあったことは、当たり前ではないから。

ひとたび中学生になれば、日本全国の全中学生が同じスタートライン。新しい毎日が始まります。学校に通いながら、自分が没頭できることを探し、打ち込み、学び、挫折し、立ち上がる。

どの学校に通おうと、本質は変わりません。そういう気持ちにたどりつけた中学受験は、きっと親の私にとってもかけがえのない体験だったのだと思います。

……ああ、走り切った!

そう思って、ふと振り返ると……いました、もう一人の小さい息子!

「またゼロから!? またいくの!? ていうか中学受験? 高校受験?」

……母、まだまだ休憩、とはいかないようです。

すべての子どもたちが、自分らしい学びの場で、個性を、得意を活かせますように。中学受験の一周目を終えた今、そんなことを考えています。
 

 
文/佐野倫子
編集/山本理沙
イラスト/Semo

 
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