性被害の多くは「知り合いから」という事実


「性暴力」と聞くと、電車での痴漢や夜道のレイプなど、“知らない人から暴力的にされるもの”、と思われるかもしれません。

しかし、「男女間における暴力に関する調査」(令和5年度調査)によると、「不同意性交等をされた被害経験」のある男女のうち、加害者が「まったく知らない人」と回答した人はいずれも1割で、多くは知り合いから被害に遭っています。

“言えない・気づけない”教師から生徒への性暴力。加害教師の「性的グルーミング」を克明に描く漫画『言えないことをしたのは誰?』は全国の学校に置くべき一冊_img0
『言えないことをしたのは誰?』より(©さいきまこ/現代書館)

また、性犯罪加害者の治療に携わる斉藤章佳氏は、「『そもそも学校も家庭も(性)暴力が起きやすい場所なんだ』という前提を持つことが大事」と述べています。

学校は教師と生徒という絶対的な権力関係があります。極端な表現をすると、児童の生殺与奪の権を教師が握っているわけです。さらに、閉鎖的で外部の目が入りにくい。明らかな権力関係と風通しが悪い環境といった構造上の問題が揃うと、暴力が起きやすくなります。(『言えないことをしたのは誰?』/さいきまこ著、現代書館)
 

先ほど紹介した20年経って教師からの性被害を自覚した女性は、以下のように証言しています。

「学校の先生だという部分がかなり大きい。もともと尊敬の気持ちを持っていて、教員から好意を告げられた時に、尊敬とか憧れとか、ちょっと混同してしまう。同年齢の知らない男の人から言われたら、“ちょっと変かな”と思うかもしれないけど、先生だと非常に混乱する」
「当時の私の性犯罪のイメージは、夜道を大人の女性が1人で歩いていて怖そうな男の人に襲われるってものしかなくて、(自分の例は)そういうのじゃないって」

(日テレNEWS「教員から…気付けなかった性被害 20年が過ぎ「普通の恋愛と違った」 きょう“日本版DBS”審議入り」)

「性的グルーミング」が学校で起きやすい性暴力の手口であるという前提知識がなければ、無理矢理されたのでなければ、同意があったと思われるのではないか、自分にも原因があったのではないか、と被害生徒が被害を自覚しづらいかもしれません。