経済力がなければ何をされても仕方ないのか?


「義両親には夫のほかに、2人の娘がいました。夫の妹たちは、女は高卒で充分という考えですぐに就職、すでに結婚しています。夫は男だという理由でさほど勉強が得意だったわけではないようですが四年制大学に進学させてもらっています。

一言で言えば男尊女卑。田舎ならよくあることだよと、友人はあきれながらも慰めてくれました。家を建ててもらったし、利光さんの仕事は安泰なんだから、まあ他は目をつぶったらと。

でも本当にそうなのだろうか? と今は思います。経済的に頼らざるを得ないからといって、何をされてもいいのかと。女だから、妻だから、そこは賢く受け流して実利をとれ。それが周囲の意見でした。実家の両親さえも、やんわりとそんなことを言いました。

でも、その言葉自体がすごく私を傷つけました。当時はうまく整理することができず、私が世間を知らないんだと自分に言い聞かせましたけれど……重い鉛を飲み込んだような、処理できない苦しさが消えませんでした」

日常の中に埋もれる、棘のような、でも忘れられない仕打ちはたくさんあったと言います。

例えば食事。居間の食卓には一緒につかず、家で嫁膳と呼ばれていたおままごとみたいなテーブルで、台所に座ってさっと済ませるよう言われたそうです。家族が食卓についている間は、そのお世話をしたり、お酒を運んだり、お代わりをよそったりするのが春香さんの役目でした。

大昔の日本ではそんな光景があったのだと思います。しかし、現代で本人が望まないのにそれを強いるとは、よほど利光さんを含めた彼のご実家は世間と断絶しているのではと思いましたが……。

「それは都会しか知らない方の実感かもしれません。あるんです、まだそういう地方の家は。家族という小さな単位では、それはおかしい、と糾弾したところで多数決できまりますからとんでもないルールだとしても抗えません。

お風呂も、私が最後と決まっています。でも子どもたちはまだ1人で洗えませんから、子どもに洗い場で付き添ったあと、最後にもう一度私が入って、丁寧に掃除し、水一滴ももらさず拭き上げます。

本当に現代の話...!?「嫁の風呂は最後で、水滴は拭き上げて。食事は台所よ」田舎に嫁いだ彼女に浴びせられた義母の言葉_img0
 

他にも例えば、育ちが悪く見えるという謎の理由で自転車に乗るのも禁止。それどころが日中に町まで出かけるのさえいい顔をしません。嫁は家を守るのが仕事だと言われ続けました。パートで構わないから仕事をしたいと言っても取り合ってもらえません。家を守れと言うわけです。でも、親戚の農家の繁忙期には無償の労働力として貸し出され、わずかばかりの野菜をもらって帰宅。その分食費は削られました。お金があるのに、すごくケチなんですよ」
 

 


理不尽で辛いと利光さんに何度も泣いて訴えるものの、親なんだから仲良くしてくれの一点張り。それどころか「愚痴っぽい嫁がいやだ」と周囲に吹聴し、夜も町まで飲みに出歩くようになりました。子どもたちはまだ未就学児。義両親は育児を手伝ってくれるわけではないので、辛い日々だったと語る春香さん。

当時の家をGoogle earthで見せていただきましたが、絶句するほど周囲には何もありません。気分転換ができないという言葉は切実でした。

このままでは精神的におかしくなってしまう気がしたという春香さん。そこで少々大胆な「嘘」をつくことにします。

後編では窮屈な生活を強要された春香さんの、驚きの解決法と、その結果起きたことについて詳しくうかがいます。
 


写真/Shutterstock
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
 
本当に現代の話...!?「嫁の風呂は最後で、水滴は拭き上げて。食事は台所よ」田舎に嫁いだ彼女に浴びせられた義母の言葉_img1
 

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