最後の一年、論文執筆のために引きこもっていた彬子さまは「博士論文性胃炎」になってしまいます。「人と関わらなければ」と部屋から飛び出し、サンドイッチ店にパソコンを持ち込んで執筆するようになってから、原稿がはかどるように。サンドイッチのおともに注文したのは、いつも「星形にココアパウダーを振ってくれるのがうれしくて」カプチーノだったとか。わかるわかる、と頷いてしまうエピソードです。
大英美術館の日本美術を研究し、博士号を取得
大学院での博士論文の研究テーマは、「19世紀末から20世紀にかけて、西洋人が日本美術をどのように見ていたかを、大英博物館所蔵の日本美術コレクションを中心に明らかにする」というものでした。大英博物館が所蔵する日本美術品の総数は約3万点で、それらの多くは明治時代に蒐集(しゅうしゅう)されたもの。では、なぜ大英博物館が明治時代に多くの日本美術を蒐集することになったのか、を明らかにする研究でした。
彬子さまがこのテーマに着目したのには、理由がありました。1回目の留学の時、学部に所属している日本人は彬子さまお一人。当然の成り行きとして、日本に関する質問は、政治・経済・歴史・文学でもすべて彬子女王に集まってきます。答えられないと、「日本のプリンセスなのに、自分の国のことを知らないのか」と言われてしまうのです。
その時、彬子さまは「自分がいかに日本のことを知らないか」を思い知らされます。同時に「日本人である」ことも実感したといいます。そうして、日本を知るために大英博物館に通いつめ、日本美術品と格闘する毎日が始まったのです。やがて論文が完成して口頭試問に合格。海外の大学から博士号を取得したのは、皇族として初めての快挙でした。
日本の文化を子どもたちに伝えるご活動
帰国後、彬子さまは拠点を京都に移され、さまざまなお役職を務めながら実現したのが、日本の未来を担う子どもたちに日本文化を伝える活動でした。
Comment