親の切ない気持ちを理解して寄り添うことが大切
まず、心構えとして持っておいていただきたいのは、高齢になった親の切ない気持ちを理解するということです。
「もしも自分が、親と同じ年齢・状況だったら?」と想像してみてください。
長年連れ添った伴侶に先立たれて独りぼっちかもしれません。体は思うように動かないし、脳の衰えも感じているでしょう。
そんな中、子どもからは「家を片づけて」と言われます。
でも、家の中を見渡すと、思い出の品ばかり……。
どうでしょう。「よし、片づけよう!」という気持ちに果たしてなるでしょうか?
実家にあるモノって、思い出しかないんです。どれも素敵な思い出。眺めていると鮮明に蘇ってきます。それを片づけるというのは、本当に辛いことです。今まで生きてきた証しを手放す。こんなに辛いことはありません。
実家片づけは、正しく実践すれば親も子も必ず幸せになれる一大プロジェクトです。けれども、その正義をふりかざして強行突破をする前に、まずは親の切ない気持ちを理解して寄り添うことがとても大切です。
モノへの執着を取るためにするべきこと
具体的には、家の中にあるモノの思い出を聞いてあげてください。
例えば、昔からタンスの上にある人形に話を振ってみると、思い出話に花が咲くこともあるでしょう。そうすると、不思議なことに「これはもういらないかな」となることがあるのです。
そのモノに詰まっていた感情を全出しすることで、モノへの執着が取れて、思い出として昇華できるのかもしれません。だから、話を聞いてあげるというのはとても大切です。
実家片づけをする本当の目的は?
誰だって、自分が大切にしているモノを「そんなのいらないでしょう」なんて言われたらイヤですよね。
その人の言うことなんて、もう聞きたくないと思うはず。
ですから、親の気持ちに寄り添って、思い出を語ってもらい、感情を全出ししてもらう。
まずはそこから始めてみるのも、心のブロックを外すためには有効です。
そしてもちろん、大事なモノは捨てなくていいですよ。
そのことは、親御さんにもしっかり伝えてください。「なんでもかんでも捨てられてしまうのでは」と思って親御さんが片づけを拒んでいるケースはよくあります。
実家片づけで、大事なモノは捨てません。大事なモノを知るために、実家片づけをするのです。
著者プロフィール
石阪京子(いしざか きょうこ)さん
片づけアドバイザー。宅地建物取引士。JADPメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。大阪で夫と不動産会社を起業、夢のマイホームを手に入れても片づかないことで理想の暮らしができないと諦めている多くの人に出会い、家の片づけを提案。独自のメソッドは、一度やれば絶対にリバウンドしないのが特徴で、これまで様々な方法を試したり、プロに頼んではリバウンドを繰り返してきた人たちの「最後の駆け込み寺」となっており、直接指導した人は1000人を超える。現在は、収納監修、片づけレッスンほか、片づけ、家事、お金、メンタルなど暮らしまわりにかかわるトークイベントやオンラインセミナーを開催。NHK『あさイチ』などのテレビ出演や、著書も多数。『一回やれば、一生散らからない「3日片づけ」プログラム これが最後の片づけ!』『人生が変わる 紙片づけ!』(ともにダイヤモンド社)は、累計16万部を突破。
『「介護」「看取り」「相続」の不安が消える! 実家片づけ』
著者:石阪京子 ダイヤモンド社 1540円(税込)
親がまだ元気だからとついつい先延ばしにしがちな「実家片づけ」。その大変さや早めに取り組むべき理由、さらには親の説得方法、モノと紙の片づけ方、相続に直結する重要な紙の見分け方などを細かく解説します。大変さだけでなく、そのメリットにもしっかり目を向けていますので、実家片づけをポジティブに捉えられるようになるでしょう。
写真:Shutterstock
構成/さくま健太
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