「時間割」を作って心と体にメリハリをつける

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——環境の変化にともなうストレス状態を乗り切るために、予防策などはあるんでしょうか。

森下:“緊張状態が続く”ことが問題なので、予防策としては、それをなくせばいいんですよね。緊張しない“緩和状態”を意図的に作っていく。性格にもよるのですが、生真面目で頑張り屋の性格の人ほど、意図的なインターバルを取れない傾向にあります。気分が乗ると、際限なく働けます! みたいに状態になってしまうので、どうしても“緊張状態”が続いてしまいがちです。

手っ取り早い予防策は、「時間割を作る」ことですね。この時間になったら何があっても仕事しない。あるいは、時間になったら何があってもジムに行って体を動かすなど。そんなふうに、いかに“さぼりタイム”を入れられるかが大事です。日本人は勤勉ですが、手を抜くことが下手なので、諸刃の剣なんです。さらに、緊張状態の緩和には、“フィジカル面でリラックスする”ことも大切なので、ジョギングをしたり、泳いだり、岩盤浴したりするのもいいですね。

 


まず“身体症状”が出るのが「適応障害」


——先生のご専門でもある「適応障害」とはどんなものなんでしょうか。

森下:適応障害は、その原因にストレス要因が必ずあります。ストレス対応力を発揮できなくなり、その結果として抑うつ状態になることを言います。流れには一連のストーリー性があり、原因と結果の文脈の過程で生じるのが適応障害です。「うつ病」は抑うつ状態とは少々異なりますが、適応障害の結果として生じる精神状態の不調に対して、うつ病と表現したりする場合もあります。少し補足すると、ストレス要因の有無に関係なく罹患するのがうつ病です。脳内のメカニズムに起因していて、脳の中のセロトニンが減るなど、化学物質の変化などを指してうつ病と言います。

——適応障害ではどういった症状が出るんでしょうか?

森下:抑うつ症状と、吐き気、めまい、頭痛、生理不順など、ストレスに伴ういろいろ身体反応があります。それと、“行動面の症状”というのもあり、会社に行けなくなる、アルコールに溺れる、パートナーに暴力を振るう、などの症状が出ることもあります。

——病院に行くべき基準はあるんでしょうか?

森下:まずは、“ちょっとした不調”は適応障害の初期症状の可能性もある、と知っておくことが大事です。なぜなら、適応障害は多く場合、“抑うつ症状”よりも先に“身体症状”が出るからです。最近肩こりや腰の痛みがひどいな……で終わらせず、ひょっとしたらストレスが溜まっているかもしれない。このままだと適応障害になってしまうかもしれない。そんなふうに考えて、“緊張緩和”のための対策を講じられるかが大切です。

職場に行けない、勤怠に異常をきたすのは“レッドライン”

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森下:質問いただいた「病院に行くべきかどうか?」の明確な境目としては、「職場への適応が破綻しているかどうか」です。職場に行けなかったり、勤怠に異常が出ていたりしたら、レッドラインを超えています。人によっては、みんなに申し訳ないからと1〜2日だけ休み、また踏ん張ってしまう。休んでは出社して、遅刻しては休んで……を繰り返す人もいます。ですが、そうした行為は適応障害を悪化させます。

レッドラインを超えた時点で、治療に専念しないといけません。それをやらなければ、最終的に駅のホームから電車に飛び込みかねない。電車に飛び込まないまでも、適応障害は心筋梗塞、脳出血などの致死的な身体疾患を引き起こすので、ストレス環境からはさっさと撤退することが肝要です。



取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵
写真:Shutterstock
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