「徹夜して一気見した」「とにかく演技がすごすぎる」と絶賛の嵐、大きな話題を呼んでいるNetflixシリーズ『極悪女王』。
筆者は80年代当時の全女(全日本女子プロレス)を知らず、プロレスも詳しくないので楽しめるのかな……と不安だったのですが、見始めると止まらず、あっという間に引き込まれてしまいました。毎クール、地上波のドラマを一通り観ながら、今クールも面白いのないなぁと思っていたところに、ズドン! と撃ち抜かれたような衝撃が走ったんです。
日本中から嫌われた、伝説のヒール・ダンプ松本こと松本香の半生を描いた本作。ダンプ松本をゆりやんレトリィバァさん、ダンプ松本の宿敵・クラッシュギャルズの長与千種を唐田えりかさん、ライオネス飛鳥を剛力彩芽さんが演じています。
▼▼ 以下ネタバレを含みます!! ▼▼
恵まれない境遇で育った少女たちが、歴史をつくった
まず、『極悪女王』の魅力は、主人公のヒロイン性です。ダンプ松本は、貧しい家庭で育つのですが、父親がめちゃくちゃ酷いやつなんです。別居しているのですが、ダンプカーで襲来したかと思えば、母親にお金を要求し、ないと突っぱねれば子どもたちの給食費にまで手を付ける。そして外に愛人を作っていることが発覚するのですが、子どもをもうけており、なんとその子どもに「かおる」とダンプ松本と同じ名前を付けているんです。愛人の子どもと同じ名前であることを知った子ども時代のダンプ松本は、大きなショックを受けます。このろくでもない親が、のちにダンプ松本が覚醒するきっかけを生むこととなります。
そして、『極悪女王』のもうひとりのヒロインといえるのが、ダンプ松本のライバル・長与千種です。長与もまた、恵まれない境遇で育ちました。長与は親が借金取りに追われ夜逃げ。親戚の家に預けられ、転々として育ちます。プロレスラーになるために長崎から上京してきましたが、お金がなく、練習場のリングの下で寝泊まりしています。
家族に恵まれないふたりは、互いに支え合うようになるのです。
髪の毛一本まで魂が宿っているかのような演技
次に、『極悪女王』の魅力は何といっても、俳優たちの振り切った演技です。まずダンプ松本役のゆりやんさん。最初は純朴で、プロレスに憧れるおぼこい少女だった松本香が、日本中を震撼させる世紀の悪役・ダンプ松本に転身する、その切り替えが本当にすごいんです。ダンプ松本として覚醒するまでは、本当に純真で、気弱で、めちゃくちゃ可愛らしいんですよね。この子がダンプ松本になるの? 信じられない! という感じ。でも、ダンプ松本になった瞬間、完全にスイッチが入って、ふてぶてしくて豪胆でイカつくなる演技は、もはやゆりやんさんにダンプ松本さんが憑依したかのよう。髪の毛一本まで魂が宿っているかのような、その場の空気さえ変えてしまう演技に心が打ち震えます。
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