日常がすべて、365日役者であることを忘れない
ーー無名塾で学んだことはいっぱいあると思うのですが、その中でも何か印象に残っている芝居の極意はありますか。
赤間:仲代さんは「日常が全て」とおっしゃっていましたね。スポーツ選手のように日々過酷なトレーニングを重ねてお金を貰うわけでもなければ、驚くほど歌をうまく歌ってお金を得るわけでもない。人間が人間を演じる事は、最も簡単なものというか、素人でもできてしまうもの。だから、それでお金を得るためには、普通に生きていてはダメだ。人よりも日常のあらゆる事を非常に注意深く観察し、意識的に生活していなくてはならない。役者はいくらでも怠けられるので仕事に関しても、例え何も勉強せずセリフを覚えて、それらしく言ったとしても、その時は誰にも気づかれないかもしれないがいつかその差がすごく大きくなって出る。だから勉強しなかった日はまずいと思わないといけない。とにかく365日役者であることを忘れたら、もうお金は取れませんよ、みたいな感じでしたね。
ーーすごくスパルタですね。
赤間:スパルタと言いますか、一流でいるための極意を、口酸っぱく伝えてくださっていたんだと思います。怒られるとかはないんですけど、ちょっとたるんで朝起きるのが5時とか6時になって、今日も走りませんでしたというのが2~3日続くと、たった、この3年間でこういう日があるっていうのは凡人だよねみたいに、さらっと言われましたね。
ーー今でもそこで得た精神は生きていると思いますか?
赤間:はい。準備しないと怖くて現場にいけません。撮影日なのに勉強してない! と夢の中で焦って、ハッと起きる事があるくらい(笑)。勉強しても、正解というものが見つかることはないのですが……。
追い焚き機能付きの風呂沸かし器が夢
ーー追い焚き機能付きの風呂沸かし器がある家に住むのが夢だったとお聞きしました。
赤間:無名塾の稽古場の上の部屋を出ても、やはりお金がないので、駒澤大学で2万円のアパートを見つけて、そこに長いこと住んでいました。友達にうちの駐車場の価値もない家だねって言われましたね(笑)。女子専用アパート、風呂なし、トイレ洗面所共同でした。冬は銭湯への行き帰りが寒いし、朝ロケがある日は共同洗面所で頭を洗ってという生活で、いつかお風呂のある家に住みたいなって思っていました。
ーー叶ったのは何歳ぐらいですか。
赤間:結婚した時なので、28歳です。でも追い炊き機能がなかったから、いつか追い炊き機能がついた家に住みたいなと。それは40過ぎてから叶いました。
ーーご夫婦ともに無名塾出身でいらっしゃいます。俳優夫婦で二人三脚、外でペットボトルの水1本買うのも惜しむくらい節約していたというエピソードをVoicyで聞きました。
赤間:そうですね。役者として食べられるようになったのがこの10年だと思います。ついこの間までアルバイトをしていました。
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