和食を食べるのは大好きでも、いざ自分が毎日作るとなると苦手意識がわきあがる――。そんな人も多いのでは?

でも、旬の食材を味わうことができて、彩りも美しく、しかもヘルシーな和食を「作るのが大変そう」という理由で敬遠してしまうのはあまりにももったいないこと!

料理家の行正り香さんは、5年前から英語による和食のテレビ番組「Dining with the Chef」(NHKワールド)に出演し、世界の人に向けて和食を紹介しているうちに、改めて和食の奥深さや魅力に気付かされたといいます。

料理家・行正り香さん 作りやすさを第一に考えた、簡単で見栄えのするレシピが魅力で、家庭での再現性も高いと人気。NHKワールドのテレビ番組「Dining with the Chef」のホストを務め、世界に向けて和食をプロモート中。

「年を重ねれば重ねるほど、和食はある一定のルールさえ頭に入っていれば、レシピを見る必要もなく、素早く作ることが最良の調理法なのだということがわかってきたんです」(行正さん)

あまり料理が得意でない人や、仕事や子育てに追われ、料理にじっくり時間をかけられない人に特におすすめしたいのが、行正さんの最新刊『レシピのいらない和食の本』(講談社)。

行正さんによると、和食を作るための調理法のベースは「焼く、煮る、揚げる、蒸す、生(切る)」の五法。これに「塩かげん」「火かげん」「調理時間」という3つの重要ポイントが加わります。本書では、「魚の塩焼き=切り身の2%」のように、「塩少々」ではなく、目安を明記しているのが特徴。なるべく正確に再現できるルールを定めることで、誰でもおいしい和食が作れるというのです。

例えば、煮物といえば和食の定番ですが、悩ましいのは味付け。本書では、「関東風の甘辛」「おばんざい」「京都料亭風」など、さまざまな風味を紹介しています。しかも、調味料の比率を微妙に変えるだけで簡単に作れてしまうのです! 今回、特別に本書から2つの煮物料理について紹介します。

まずはおふくろの味の定番で、しっかりとした味がついていながら、どこかほっとする味わいの「肉じゃが」。味付けのコツは行正さん曰く、「七ちゃんだし」。これは、「だし7に対して、砂糖、みりん、しょうゆが各1」のこと。肉じゃがの材料をゴマ油で炒めてから「七ちゃんだし」をひたひたに加え、フタをして弱火で煮るだけで完成!

牛薄切り肉、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんのシンプルな肉じゃが。豆板醤やコチュジャンを加えるのもおすすめ

一方、肉や魚の煮物も和食の定番ですが、いまいち味がしみ込まない、なんて失敗をしたことのある人も多いのでは? ところが、行正さんの手にかかれば、「さみしさ同量 水ひたひた」で肉も魚もばっちり煮ることができるというのです。

「さみしさ同量 水ひたひた」の正体は、魚一切れ、肉はげんこつ1つ分の量に対して、「大さじ1の酒(さ)、みりん(み)、しょうゆ(し)、砂糖(さ)を入れて、水をひたひたに加えて煮る」。たったこれで関東風の甘辛い味付けのできあがり! ちなみに砂糖やしょうゆを半量にして、水の代わりに酒や塩を加えて煮ると、上品な割烹風に早変わりするとのこと。

魚はさっと湯通しして臭みをとります。時間がなければ粗塩をふって流水で洗うだけでもOK

本書を読んでいると、あまりの簡単さに、「これなら私も和食が簡単に作れそう!」と思うこと間違いなし。ルールと調理法を押さえておけば、レシピ本に頼らなくても、旬の食材を組み合わせるだけで和食のバリエーションも広げることができるはず。食卓をさらに豊かなものにできそうです。

 

『レシピのいらない和食の本』(講談社)
行正り香著 ¥1800(税別)
和食の一番のキモである「塩かげん」と「火かげん」のルールを覚えてしまえば、レシピなしで味がラクに決められるようになる!

PROFILE

吉川明子/出版社、編集プロダクションなどを経てフリーへ。週刊誌、雑誌、Webサイトなどで執筆、編集を行う。旅と食べることと本が好き。人生の3分の2は減量のことを考えてきた。