『ネオン・デーモン』
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:エル・ファニング、カール・グルスマン、ジェナ・マローン、キアヌ・リーヴス
配給:ギャガ 1月13日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて公開
© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch
あけましておめでとうございます! お正月休み、みなさまどのように過ごされていますでしょうか。見逃していた映画をチェックしたり、ドラマを一気観したり、時間を気にせず夜更かしできるのも、この時期ならではのお楽しみですよね。しかし私の場合は毎年、休み明けに頭がなかなか仕事モードに切り替わらず、社会復帰なんぞ無理……! と涙目になってしまう時期でもあります。同じような方も多いのでは? という勝手な決めつけのもと、新年1本目には脳が覚醒するような刺激的な作品『ネオン・デーモン』を紹介させてください。
ヒロインはモデルを目指して田舎町からロサンゼルスへと出てきた女の子、ジェシー。洗いざらしのコットンみたいな純朴な彼女は、メタリックな整形美女ばかりの世界で異彩を放ち、瞬く間に一流のスタッフたちの目を惹きつけていきます。そしてジェシーもまた、欲望と嫉妬の渦のなかに引きずり込まれていきますが……。
ファッション業界の光と闇を描き出す不穏なサスペンスは、次第にアクロバティックな展開を見せていきます。思いもよらぬ方向へと舵が切られて、終盤には「ええええええええ!?」状態に。グロテスクな場面もあるので好みがわかれそうな作品ではあるのですが、美に対する執着というものを究極まで煮詰めていくと、やっぱり色々な意味でホラーになってしまうのだろうな、と納得してしまいました。美の基準はそれぞれでも、美しくありたいと願わない女性はいないはず。そう考えるとこれは、とても身近なホラーだといえるかもしれません。
どこか人工的な照明が奇妙で鮮やかな悪夢感を醸し出す映像を生み出したのは、『ドライヴ』で注目を集めたニコラス・ウィンディング・レフン監督。アルマーニやサンローランのドレスが妖しくきらめく、現実と幻想、この世とあの世が交錯するような映像に身を委ねてみてください!
PROFILE
細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
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