『未来を花束にして』
監督:サラ・ガヴロン
出演:キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム=カーター、ブレンダン・グリーソン
配給:ロングライド 1月27日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて公開
© Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2015. All rights reserved.


先日のゴールデングローブ賞で功労賞を受賞したメリル・ストリープのスピーチ、本当に心動かされものでしたね。「侮蔑は侮蔑を招きます。暴力は暴力をあおります。権力者が立場を利用して他人をいじめれば、私たちはみな負けるのです」。ドナルド・トランプという言葉を使わずに彼を批判した聡明なスピーチを聞きながら、もしもヒラリー・クリントンが大統領になっていたら、と考えずにはいられませんでした。今回は、“ガラスの天井”が打ち破られなかった今だからこそたくさんの人たちに観てほしい、実話をもとにした映画『未来を花束にして』を紹介します。

 

舞台になっているのは、1912年頃のロンドン。劣悪な環境の洗濯工場で働きづめで生きてきた労働者階級の主人公、モードが、女性の選挙権を要求する人々と出会い、活動に身を投じていく姿が描かれていきます。原題でもある“サフラジェット”(女性参政権運動)について詳しく知らずにこの映画を観はじめたため、“言葉より行動”をモットーにしていたという彼女たちのあまりの過激さに、最初は少し戸惑いました。

 

爆発物を作って放火をし、建物を破壊し、いかなる弾圧にもひるむことなく、やがて驚くような方法も選びとりながら、まさに身を挺して人々に自らの主張を訴えていく。息子との別れに胸を押しつぶされながらも“ありえたかもしれない人生”への希望を決して手放さずに活動を続けるモードの叫びと涙は、権利のための戦いが彼女にとっていかに切実だったのかを物語っています。

 

モードを演じたキャリー・マリガン、そして活動家のリーダーを演じたメリル・ストリープら女優陣の心のこもった演技が素晴らしく、これは遠い昔の誰かの戦いの記録ではなく、とても近しい物語なのだと感じさせてくれます。現代を生きる私たちが、当たり前のように手にしているもの。そして、まだ手にしていないもの。その両方について思いを巡らせる機会を与えてくれる作品です。

 

PROFILE

細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
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