バードウォッチングならぬバッグウォッチング
バッグはその人のスタイルとセンスそのものです。ですからバッグを見る目をつけることによって、自分を知り、自分への自信をつけていくことができます。そこで私は、バッグを見る目を養う訓練の一つとして、街行く人の持っているバッグをよく観察しています。時には、本当に自分にぴったり合った美しいバッグを持っている人を見かけると、近づいていって「アナタのバッグを見せて!」とお願いしてしまうことも。先日も、とても使いやすいそうな布のバッグを持った80代ぐらいの女性を見かけて、心に残りました。決して革の高級品ではないにもかかわらず、本当に彼女に似合っていて、どんなバッグよりも素敵に見えたのです。それはおそらく彼女が、これまで様々なバッグを持ってきて、「今の自分にはこれが一番使いやすく理想的」とたどり着いたものだったからではないでしょうか。その布バッグはたしかに素敵なデザインでしたが、これを若い人が持っても、軽く見えてしまうと思うのですよ。
バッグは自分の名刺です。だからそのときの自分の質に合ったバッグを持つ必要があります。でないとミスマッチ感が生まれ似合わないので、持っていて疲れてしまうだけ。高級ブランドのバッグというと、一見、自分の名刺代わりになりそうですが、そこから生まれる自信はユニフォームのようなものに過ぎません。そうではなく自信とは、自分らしく生きていることから生まれるもの。それゆえバッグは、今の自分が反映されたものを選ばなくてはなりません。
先日私はとても素敵なバッグを見かけ、「欲しい!」と強く思ったのですが、自分がどう使っていいのかがどうしても見えませんでした。自分がどういう人間か分かっていると、合わないバッグは選ばなくなるものです。mi-mollet読者の皆さんは、自分らしいバッグを持っていると自負できますでしょうか? 是非バードウォッチングならぬバッグウォッチングをして、自分に問うてみてください。
ドミニック・ローホー
著述家。フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得し、イギリス、アメリカ、日本の大学で教鞭を取る。様々な国に移り住む中で、モノを持たず豊かに暮らす「シンプルライフ」を確立。それを本にまとめた『シンプルに生きる』(講談社+α文庫)がベストセラーに。他に『シンプルリスト』、『99の持ちもので、シンプルに心かるく生きる』(ともに講談社)など著書多数。また禅寺や墨絵を通して日本の精神文化に理解が深いことでも知られる。
〜次回は「五感を磨く」 6月15日公開予定です〜
第一回「完璧主義ではなく快楽主義を目指す」はこちら>>
第二回「良いものは高いものとは限らない」はこちら>>
第三回「「少ない」「小さい」は快適だと知る」はこちら>>
第四回「「ノーセカンドチョイス」と「ワンアクション」が豊かな時間を生む」はこちら>>
新刊コラム●
『マイバッグ 3つのバッグで軽く美しく生きる』ドミニック・ローホー 著 赤松梨恵 訳
自分にとっての理想のバッグを見つけることは、自分がどう生きたいかを見つけることでもある——。大ベストセラー『シンプルに生きる』(講談社+α文庫)で知られるドミニック・ローホーさんの最新刊は、人生を豊かにするために欠かせないアイテムであるバッグ選びについて説いたもの。本当に必要なバッグの数、バッグの中身の整理の仕方、そしてそこから身も心も軽く生きる秘訣まで教えてくれています。これを読めば、究極のバッグだけでなく、自分らしい幸せもきっと見つけられるはず! ¥1100/講談社
取材・文/山本奈緒子 構成・写真/大森葉子(編集部)
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