映画『女神の見えざる手』~“パワフルウーマン”が大活躍の今年の映画界。次なるヒロインは“見えざる手”で政治をあやつる敏腕ロビイスト_img0
 

『女神の見えざる手』
監督:ジョン・マッデン
出演:ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、サム・ウォーターストン
配給:キノフィルムズ/木下グループ TOHOシネマズ シャンテシネほかにて公開中
© 2016 EUROPACORP – FRANCE 2 CINEMA


今年は『ワンダーウーマン』や『アトミック・ブロンド』などパワフルな女が主人公の映画の当たり年! 今回紹介する『女神の見えざる手』はアクション映画ではありませんが、自分のやり方を曲げず、決して周囲に媚びることなく職務をまっとうしていく新しい時代の強い女像が描かれています。彼女の姿を見ていたら、かっこいい女性を指すときに使われる“男前”と言う言葉への違和感がグンと増してしまいました。

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エリザベス・スローンの仕事は、特定の企業や団体に利益をもたらすため、政治家たちに根回しをするロビイスト。女性の銃保持を推進したいという大きな団体からの依頼を断り、銃規制派の小さな会社に移籍して、敵陣営との闘いを繰り広げていきます。このエリザベス、なかなか共感するのは難しい強烈な人物なのですが、それゆえ一周まわって面白い! というタイプの主人公。勝つためには、高校時代に銃乱射事件に遭ったというトラウマを抱えた部下を利用し、プライベートでは高級エスコートボーイを呼んで欲望を処理。
こんな人の部下には絶対になりたくない! と誰もが思う超合理主義のエリザベスを、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステインがまるで武装するかのように真っ赤なリップとクールな衣裳を纏い、シャープに演じています。女性の権利向上を訴えるウィメンズマーチに参加するなど、普段から政治的な発言をしているジェシカは、この役を演じることに大きな意味を見出していたのかもしれません。

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神をも畏れぬ彼女のロビイ活動の源にあるのは、ワーカホリック的な情熱なのか、それとも銃社会への大義なのか。エリザベスの不正疑惑をめぐる聴聞会からはじまり、先読みできない攻防戦を描いていくスピード感たっぷりの展開で、ラストまではあっという間! ちなみにエンディングではある驚きの事実が明かされるのですが、私はすっかり騙されてしまいました。ラスベガスでの銃乱射事件も記憶に新しく、アメリカでの銃規制はたやすいことではなさそうです。けれどもエリザベスには、救世主になるのはこんなヒーローなのかもしれない、と思わせてくれるパワーがみなぎっています。

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PROFILE

細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
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