2017.12.26

【最終回】40代は「人生の土台」を創るとき

 

ある仕事で、40代の頃の写真がほしいと頼まれ、当時の秘書が整理してくれていた仕事ファイルを、久しぶりに開いてみました。

過去を振り返らないタイプなので、ほぼ見直したことがありません。20年近くの歳月を経て見る40代の自分は…

な、なんだこれ!?

いや~見ているだけで疲れるわ。傍から娘も覗き込んで、「いややわぁ、おっかないオバハンやんけ」となぜか妙な関西弁に。

その通りでした。どの写真も、肩に力が入りすぎ、ガンバリがみなぎっています。

目が笑っていない。ああ、苦しそうだ。正直、そう思いました。

背伸びして買ったスーツに身を包み、肩をいからせて写真に写っている自分は、さぞ呼吸が浅かっただろう、とかわいそうになるくらいです。

この頃、平均睡眠時間3時間。体力があったので、月40本近い締め切りをこなしていました。

でも、結局は身体も心も疲れ果て、壊してしまった。そこでおとなしく反省して休めばよかったのですが、「ひとりモーレツ社員」だったわたしは、自分に負けたことを許すことができず、それ以降も無理をし続けました。

当時の写真の貌は、人生の動乱期を駆けている、泥まみれ汗まみれの余裕のない貌です。

でも、写真を眺めているうちに、もしかしたらそれはそれでよかったのかもしれない、という思いが込み上げてきました。

一生に一度、人生のなにもかもが変わっていく、さながら明治維新のごとき動乱期を生き抜く、サムライのような時期があってもいいのかもしれない、と。

なぜなら、それから20年が経ってみると、40から先の人生すべての土台は、この時に作られているということがわかるからです。


自分という茎に大きな「蕾」を


能力や秘めている力を知る。限界も知る。そしてそれまでの人生ではなかった「諦める」ことも知り、と同時にまだまだ再生力があることも知らされるのが40代です。

10代から30代を養分にして伸びて行った茎は、40代で大きな蕾をつけていきます。

花開くのはまだ少し先。

40代は、おとなとして成熟する第一歩、いわばおとなの一年生。

それは、円熟という大輪の花をあでやかに咲かせるための土台の時期なのです。

だから、わけもなく焦ってしまったり、気持ちのアップダウンが激しかったりするのも当然のこと。どんな工事現場でも、職人さんたちは汗まみれで自分の仕事に懸命です。余裕もなくて当たり前。

そんな基礎工事の現場監督である40代が終わると、そのしっかりとした土台の上に、軽やかな花びらを震わせながら、色鮮やかな花が薫り高く咲くのです。
 

魂のよりどころを持つ


主たる舞台が工事現場なのですから、そこで生きるのはなかなか大変です。上手に気分転換したり、自律神経を安定させる術も持っていなければなりません。

そんなとき、役に立つのが魂のよりどころです。

社会の中ではなく、心の中にだけ存在する、あなただけの「平安のサンクチュアリ(聖域)」をもつのです。

それはなんでもいい。音楽でも、本の中の言葉でも、一対のピアスでも。

条件は、社会という規範で判断しない、されないものである、ということ。

40代は社会性の嵐に巻き込まれる季節でもあるので、その圧に屈しない、別次元のスペースを心のなかに持つことが必要なのです。

そこでは冷静になれ、素の自分に戻ることができる。傷も癒せる、夢も見られる。そんな場をしっかりと作っておくことが大切です。

わたし自身は、すべてを仕事に明け渡してしまったことで、持病というつけを払っています。

それはそれで多くの学びや気づきもあるのですが、オススメはできません。

すべてを社会や肩書や立場の犠牲にしてはいけないのです。何人たりともおかすことのできない、自分だけの場所を確保することは40代の生きる知恵です。
 

ありがとう、妹たち、娘たち!


いま、60代のわたしには、そんな聖域が幾つもあって、毎日が楽しくて仕方ありません。40代の時には想像もつかないことでした。

そう、あなたに今、約束できることは、「60になったら想像もつかない華やかで自由な時間が待っている!」ということ。

それを信じて、人生の基礎工事にしっかりと取り組んでくださいね。

この1年、読んでくださるあなたに支えられて書き続けることができました。いつも、傍にあなたの気配を感じていました。

真面目でがんばりやで、繊細な五感をもち、本当は泣き虫なのに、いつも笑顔で頑張っているあなた。

そんな「もうひとりのわたし」を思い浮かべながら、その全部に「OK!」と言いたくて、テーマを選び、書くことは、大きな喜びでした。

単行本になって戻ってきます。それまでしばしのお別れです。

みんな、元気でね!
そして心からの愛と感謝を。
 

 

 

~編集部より~

1年間にわたってお届けしてきた光野 桃さんの連載ですが、連載スタート当初の予定通り本日最終回を迎えることとなりました。とても寂しいですが、時期はまだ決まっていないものの単行本化される予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちください!

また新年は光野さんの新刊の発売がすでに2冊予定されておりますし、なんらかの形でまた光野さんにはミモレにご登場いただきたいと思っております。

「ミモレ読者の方とともに歩いているような気持ちだった」とおっしゃってくださった光野 桃さん。コメント欄が毎回こんなに熱く温かかった連載はほかにありません。光野さんへのメッセージは引き続きこちらのコメントにお寄せ頂けたらと思います。

一年間ご愛読頂きまして、ありがとうございました!(川良)