――3年前からジムでのパーソナルトレーニングを始めた谷村さんですが、そのきっかけになったのが、テレビ番組への出演でした。足腰の強度を測ったところ、「オンエアしないで!」と思うほどの惨憺たる結果だったそう。

谷村:私の足腰が弱すぎて寝たきりになったら、娘に迷惑をかけてしまうと思ったんですよね。毎週1回、1時間半のトレーニングを受けるようになりました。トレーナーさん方が前向きすぎるように見えて、入会しておきながらはじめはちょっと怖かったのですが、今では階段が辛くなくなりました。同時期に若い頃は絶対にやらないと思っていたゴルフもはじめたんです。スコアが伸びるとうれしいですし、やらないよりやったほうが楽しいな、と感じています。

 

―― 苦しかった30代を抜け、いろんなことができるようになって楽しかった40代後半から50代を経て、60歳のスタートラインに立ったばかりの今も楽しいという谷村さんですが、一つだけ気をつけるべきことがあると言います。それは「偏屈になるな」ということ。

谷村:人生を複雑にし、自分を孤独に追い込むのは“偏屈”です。偏屈にさえならなければ、後半の人生は絶対に楽しくなります!

 

――『過怠』の執筆で、命の誕生は奇跡であることを再確認した谷村さんは、その奇跡をどうするかは自分次第と考えています。

谷村:奇跡を尊く思うのも、軽んじるのも人それぞれ。命に限らず、どんなことでも当たり前だと思った途端に、急に粗末にしてしまいますから。年を重ねるにつれて奇跡を尊く思えるし、ありがたいことばかりだなとより強く実感しています。

<作品紹介>
『過怠』
谷村志穂/著
定価:2090円

親子とは、なんであろうか。誕生とは、どの瞬間をさすか。なぜ多くの夫婦が、実子に拘るのか。養子ではいけないのか。子とは、両親の遺伝子を運ぶ船であり、親が子を助けるのは、自らの遺伝子を載せた方舟を無事に船出させるためだ。そうとまで言い切る学者もいる。自分の犯した罪を忘れたいがためなのか、この世に産声をあげた子らは、すべからく何れかの親を持つ天からの贈り物である、と今ここにいる老人は信じます。――本文より


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撮影/市谷明恵
ヘア&メイク/森野友香子(ペール)
取材・文/吉川明子
構成/坂口彩