平穏な日常に潜んでいる、ちょっとだけ「怖い話」。
そっと耳を傾けてみましょう……。
 

第23話 私の夫は、人畜無害

 

「ええ? それじゃ美雪さんのご主人、出張のふりして他所の女と一緒ってこと!? 最低……美雪さん、優しいからって舐められてるのよ」

ホテルのティーサロンであることも忘れて、私は大きな声を出してしまった。

 

「しー! 実花ちゃんたら、こんなとこ知り合いだらけなんだからしー! ……そうなのよ、酷いでしょう? もう私、悔しくって」

もともとはピラティス教室で出会った「ママ友」ならぬ「妻友」の美雪さん。私たちが通っていた教室は、超都心にあり月会費も50000円と、ピラティス教室にしてはちょっとお高め。その代わりプールとジャグジー、ラウンジも自由に使えるので、周辺の暇なマダムが集まっていた。

その中でもひときわ若い私たち。アラサーといっても、結婚してから手入れを怠っていないのでさらに若く見えるはず。同世代が少ないなか、いつのまにか話すようになり、今ではこうしてピラティス教室の外でもランチをしている。

私たちには年齢以外にもいくつか共通点があった。15歳以上年上の裕福な夫。子どもがいないこと。そしてとにかく時間を持て余していること。

今日、美雪さんが予約してくれたのはアフタヌーンティーで時間無制限と聞いて、なにか相談があるのかな? とは思っていたが……これは由々しき問題だ。

「それで? 美雪さんはどうしたいの?」

私はティーカップを置くと、身を乗り出した。
 

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春の宵、怖いシーンを覗いてみましょう…。
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