それが悲劇か喜劇かは、それぞれが決めればいいこと


ーー原田さん演じるラネーフスカヤは、周囲の助言を聞き入れることができず、現実から目を背けることでどんどん窮していきます。チェーホフはこれを悲劇ではなく喜劇として書いたと言われますが。

喜劇か悲劇かは、それぞれが決めればいいのかなと思います。だって私たちみんな、人生を一生懸命に生きているけど、はたから見れば何やってんのよと思うようなことはいっぱいあるじゃないですか。迷路から出られないでいるのを上から見ているようなことがね。だから、それは作品を見た人が決めればいいのかなと思います。

だってね、この女主人もひどいこと言うんですよ。言っちゃうんだそれ、というようなセリフが時々あって、でもすぐにごめんね、私ひどいことしちゃったわと(笑)。そういうのが面白いですね。

ーー全然お金ないのにみんなにチップ渡したり、物乞いが来たら持ってるお金を全部渡しちゃったりというのも喜劇ですよね。

辛い状況も描かれるんだけど、でも最終的にはみんな明るい。そこがチェーホフの、人に対する愛情だと思いますね。『三人姉妹』にはもう一つ、「私たちは私たちの人生を生きなきゃいけないのよ」というセリフがあるんです。自分で言いながら、なるほどなと思いました。チェーホフ作品の、こういうところが好きですね。


ーー話は少し逸れるんですが、今回の『桜の園』のメインビジュアルの原田さんが本当にかっこよくて素敵でした。あのお写真を見て、いくつになっても美しくいられる秘訣を聞きたくなってしまったんですが。

 

ありがとうございます。でも映像も4Kとかになって、ハイビジョンでも嫌だと思っていたのに、次は8Kなんてね。昔、無声映画からトーキーになった頃に、落ちこぼれちゃった女優さんがいるそうなんです。声がよくなかったりセリフがうまく言えなかったりして。私もそうなると思っていたの。4Kで落ちこぼれていく、きっとそうなっちゃうなと思っていました(笑)。

ーー(笑)。絶対にならないと思いますが、原田さんでもそんなこと考えるんですね。

 

もちろん考えますよ。よく思うのは、俳優はどんな役が来るかわからない。すごくくずれた役も、ものすごく高貴な役もあって、両方できるための素地は持っていなくちゃいけない。くずすのはある意味ラクなんです。だらしなく座るとかは放っておいてもできるけど、きちんとした姿勢や仕草というのは急に言われてもできないんですよ。だから普段からどう見えるか、きれいに立つ座るといったことは、気をつけていますね。

たとえば街を歩いていて、建物のガラスにふと自分が写った時に「あ、今お腹出てたな……」とかね。信号を待つ間もきちんと立つようにしたり。