写真:西村尚己/アフロスポーツ

日本大学アメリカンフットボール部の薬物問題が世の中を騒がせています。同大学は以前にも悪質タックル問題や、元理事長らの脱税・背任など不祥事のオンパレードとなっていました。

現理事長で作家の林真理子氏は、旧態依然とした体質を一掃するため、新しく理事長に就任した人物ですが、今回の大学側の対応を見ると、やはり体質は変わっていないという印象を持った人が多かったのではないでしょうか。

 

さらに言えば、大学という教育を行うための組織が、大きな政治権力を持っている(ように見える)ことについても、多くの人が不可解に感じていると思います。学校=政治権力というのはなかなかイメージしにくいものですが、それはどのようなメカニズムなのでしょうか。

言うまでもなく、大学というのは学生を集めて教育を行ったり、学者が研究するための組織ですが、日大のようなマンモス大学になると、教育とは別の顔を持つようになります。それは、多くの人やお金が集まる巨大産業としての側面です。

日大には大学と大学院だけで8万人近くの学生が在籍しており、附属の高校などを含めると12万人という圧倒的な学生数・生徒数です。累積の卒業生は120万人を超えており、全国に卒業生のネットワークが構築されています。日大は全国でもっとも多くの「社長さん」を輩出していることでも知られており、日大出身の社長さんは全国に2万人も存在します。スポーツも活発で、日大の強豪チームには全国の高校から進学希望者が殺到します。

ここまで大学の規模が大きくなると、組織の運営は大企業に近くなってきます。同大学が保有する土地は東京ドーム670個分にも相当する莫大なもので、講義棟や研究棟といった建物の延べ床面積は東京駅の40倍もあり、年間の支出総額は2700億円に達します。経営範囲は手広く、日大病院など医療機関にまで及びます。

このようにマンモス大学にはたくさんの人とお金、そして名声が集まりますから、しっかりとした組織運営を行わないと、不祥事が起こりやすくなってしまうのです。

ひとつの例をあげてみましょう。大学が新しくキャンパスを作ったり、古い校舎を建て替えるだけで、そこには大きなお金が動きますから、不動産事業者や建設事業者、さらには施設の運営や維持管理を請け負う事業者に至るまで、多くの企業が案件を受注したいと考えます。そうしたしがらみのなかで、色々な人物が間を取り持つことになりますから、立場を悪用しようという人物が経営陣に就いてしまうと、大きな政治利権となってしまうのです。

 
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