ちなみに逮捕された元理事長らの不祥事も、施設建設をめぐる事業者との不透明なやり取りが発端となっていました。しかもやっかいなことに、一連の不祥事には、人的ネットワークが濃密とされる同大学の運動部出身者が多く関与していたことも報道で明らかとなっています(元理事長は相撲部出身で、理事長の側近とされた人物もアメリカンフットボール部出身でした)。

人脈というのは良い方向で活用すれば、すばらしいものとなりますが、中には人脈を悪用する人もいます。人とお金が有機的に絡み合い、悪い方向で活用されてしまったのが以前の同大学だったわけです。

今回の事件を受けて行われた記者会見では、林理事長らに対して記者から「旧勢力が排除できているか」といった質問が出ていましたが、この旧勢力というのは、元理事長を筆頭に構成された派閥のことを指しています。

冒頭にも述べたように、林氏は旧勢力を排除し、日大の経営を健全化するために招聘された人物です。ところが会見では「就任してから、スポーツの方は遠慮があり、そちらに手を付けられなかった。文系の方々とは親しく話せても、スポーツ関係とは距離を置くというような私の心理があった。スポーツの方は後回しにしていたのは事実であります」と驚くべき発言を行いました。

写真:東京スポーツ/アフロ

林氏は誰もが知る著名作家ですが、ここまでの人物であっても、一部の派閥に対して遠慮があり、適切な指示が出来なかったことを自ら認めてしまったわけです。この発言は、いまだに日大の組織内部で特定の派閥が強い影響力を持っており、トップといえどもそこに切り込むのは容易ではないことを伺わせます。

 

林氏は就任後、組織の改革に奔走しており、トップダウン型の解決を目指していたと言われます。ところが大学組織が持っている政治力や利権というのは、末端の小さな利権が積み上がり、その集大成として形成されていますから、いわばボトムアップ型の政治利権と考えてよいでしょう。

この場合、トップダウン型で多少、組織を変えたとしても、末端まで貫徹するのは容易ではありません。今後、林理事長が何らかの責任を取るのか、今後も改革を進めていくのかは現時点では分かりませんが、林氏が本当の意味で大学を改革したいと思うのであれば、組織の仕組みを少々変えただけではほとんど効果はないでしょう。

末端から積み上がった利権を一つ一つ解きほぐし、関連する組織をすべてゼロから作り直すといった気の遠くなるような作業が必要となるはずです。林氏ら現経営陣が背負った課題が極めて大きいことだけは確かなようです。

 

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