米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。


みなさんは、今年の3月に開催されたWBC(2023 WORLD BASEBALL CLASSIC)はご覧になっていましたか? 
野球に詳しくない私は大谷翔平選手が出場しているからちょっと気になるな、という気持ちで見始めたのですが、いつの間にか夢中になって食い入るように見ていました。

©2023「憧れを超えた侍たち」製作委員会

日本中を熱くさせた侍ジャパンを追いかけたドキュメンタリーが、『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』。映画館で限定上映されていた作品が、Amazon Prime Videoで配信されています。
ちょうど母が見ていたので一緒に見てみたら、とてもグッとくる場面が多くて……。
母に「どうしてそんなに共感するの? 私は冷めている人間なのかしら」と言われるほど心を動かされたんですよね。

©2023「憧れを超えた侍たち」製作委員会

共感した理由を考えてみると、スポーツと舞台と畑はまったく違うけれど、海外に出て必死になった経験があるからかな、と。
試合前に大谷選手がチームメイトに送った「憧れるのをやめましょう」という言葉が有名になりましたよね。
まさにブロードウェイで『シカゴ』の舞台に立ったとき、周りの役者さんたちと自分を比べて憧れてしまったら、この現実を乗り切ることはできないと覚悟を決めたことを思い出しました。

©2023「憧れを超えた侍たち」製作委員会

それにしても大谷選手の人間性とオーラは本当にすごい! ボクシングの井上尚弥選手と対談したときにも、普通の人とはまったく違う目の奥の力を感じたのですが、一流の選手の人たちに共通するものなのかもしれません。

 

世界一への軌跡に完全密着したドキュメンタリーということで、栗山英樹監督が指揮をとってチームを編成していく会議にもカメラが向けられています。
ひとりひとりの選手が試合に行き着くまでのドラマも描かれているので、ダルビッシュ選手は裏側でもいいお兄さんとして若手選手を支えていたんだなと感心したり、バックヤードでもこんなにカメラが近くにいたら選手のみなさんはリラックスできないのでは? と心配になったり……。
でも常にカメラがそばにある状況をいい緊張に変えて、自己コントロールに利用できるのが一流選手のポテンシャルなのでしょうね。

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大谷選手をはじめ、オンとオフのバランスをしっかり取って周りを巻き込んでいく人たちだからこそ、“憧れを超えた侍たち”になれたのだろうなと感じました。

そしてこの作品に貫かれているのは、栗山監督から選手たちへの愛情とリスペクト。最後に村上宗隆選手に「これからだぞ」という風に声をかけたシーンを見ながら、指導者の存在の大切さを実感しました。
結果を知っているのに思わず手に汗握ってしまう瞬間もたくさんある、見応えのあるドキュメンタリーです。

 

 

<作品紹介>
『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』

2021年12月の栗山英樹氏の監督就任から「侍ジャパン」の激闘に日本中が感動した「2023 WBC」までの間、「侍ジャパン」の世界一への軌跡を振り返るドキュメンタリー。「侍ジャパン」の選手選考会議から宮崎合宿の舞台裏、本大会ベンチやロッカーでの様子など、チーム専属カメラだからこそ撮影できた貴重映像で激闘の裏側に迫ります。
は次のようにコメントしています。
「ここでしか見られない選手選考の裏側や、宮崎合宿、WBC期間中のベンチやロッカーでの様子など、感動の裏側はもちろん、選手の苦悩や葛藤などさまざまな出来事を見ることができます。映画やドラマでもなかなか描くことができないあの激闘と感動の日々をぜひお楽しみください」(撮影を務めた三木慎太郎監督)
©2023「憧れを超えた侍たち」製作委員会


取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)

 

 

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