方法3:職場の支援制度と仕事環境の改善に参加する

 


介護と両立しやすい仕事の特徴を知り、評価・改善に関わる

「仕事と介護の両立は、もう、ちょっと難しいかもな⋯⋯」と感じたときは、「辞める」という決断をしてしまう前に、勤務している企業の人事部などにも、必ず相談をしてみてください。

仕事と介護の両立は、あなただけでなく、企業にとっても大切な目標なのです。もしかしたら、あなたが、あなたが勤務している企業の新しい両立支援制度の構築に関わることになるかもしれません。

 

仕事と介護の両立について、どういう条件があれば従業員が「両立しやすい」と感じるかを調査(サンプル数:594人)した論文があります。

この調査では、仕事と介護を両立させるために職場に求められるのは3つの要素であることがわかりました。

ただし、この調査結果には、注意すべき点があります。それは、この調査に協力したビジネスケアラーたちの多くは、おそらくは、介護の素人だということです。そうした素人は、自分の仕事と介護の両立にとって本当に必要なことが、介護サービスに関する知識であるということを知らない可能性が高くなります。

そうした限界がある前提で、以下、3つの要素について考えてみます。

1つ目の要素は、「意思決定権が分散されている職場(分権的な職場)であること」です。

こうした職場のほうが、少数の権力者に意思決定権が集中している職場(集権的な職場)よりも、仕事と介護の両立がしやすいということです。集権的な職場では、従業員は、決められた仕事を決められたとおりに進めなくてはならないため、介護のために仕事を調整することが困難になるようです。

2つ目の要素は、「自分の仕事をほとんど自分1人で完結することができて、同僚の仕事とは独立しているような職場(相互依存性の低い職場)であること」です。

こうした職場だと、仕事と介護の両立がしやすいということです。逆に、自分の仕事が終わらなければ、同僚の仕事も終わらないような職場(相互依存性の高い職場)では、同僚に気遣って、なかなか自由に仕事の速度を調整することができません。結果として、急な介護対応がしにくくなり、仕事と介護の両立は難しくなります。

3つ目の要素は、「目標は与えられていたとしても、それを達成するための中身については自由にしてよいような職場(職務自由度の高い職場)であること」です。

こうした職場では、必要なときに自由に休みを設定することができるため、仕事と介護の両立がしやすいようです。逆に、仕事の進め方まで細かく決められているような職場(職務自由度の低い職場)では、これが難しくなります。

まずは、自分の職場が、これら3つの要素に照らして、どれほど両立に有利な条件が整っているのかを考えてみてください。そのうえで、有利な条件が整っていれば、ビジネスケアラーとして十分にうまく両立していけます。むしろ仮に介護離職をして、再就職先のほうが両立のための条件が不利だったりすれば、悲惨なことになるからです。