転職エージェントに心がけてほしいこと


ただ、残念なことに、多くの転職エージェントはこのようなバディを持っていません。来栖の役も未谷の役も独りでこなさなければならないのです。
実際、私もある転職支援の現場で来栖のような熱心な転職エージェントと、その言葉や提案に傷ついた転職希望者の間に入って仲裁した経験があります。その転職エージェントは本当に親身になっていたのですが、ドラマにおける来栖の役割と未谷の役を独りでこなすのは難しいことが多いようです。

では転職エージェントはどうすればよいのでしょうか? それは、温かさを伝える努力を怠らないことです。

 

人の態度は意識一つで大きく変わります。当然、向き合っている人たちが持つ印象も変わります。
特に誰かに現実を伝えるときは温かさを伝える努力が必須です。なぜなら、現実とは厳しく残酷なものです。現実を伝えるという行為は、伝える方の温かさを覆い隠す事が多いのです。だから余計に未谷の愛嬌のような温かさを伝える態度が必要なのです。
もちろん、みんなが未谷のような愛嬌を持つのは難しいかもしれません。しかし、転職エージェントは現実を突きつけるときこそ、温かさを伝える努力を怠ってはならないのです。

 

転職希望者に心がけてほしいこと


そして、このドラマには転職希望者のみなさまにも大事な示唆があります。
現実の転職エージェントは未谷のような愛嬌はありませんが、人の力になりたくてこの仕事を選んだ人たちです。その奥底には温かさがきっとあるはずです。
もちろん、諸事情で成立実績のノルマに追われて温かさを出す余裕がない場合もあります。その態度に傷つくこともあるかもしれません。しかし、本質的には人の力になりたい方がこの仕事をやっているのです。ドラマのようにわかりやすくはありませんが、彼らの真心を信じて言葉や提案を検討してもらえたら嬉しいです。

もちろん、転職エージェントに温かさを見出しにくい……という経験をした方もいるでしょう。その場合は、成立実績に追われていない環境でゆっくり相談に乗っていただくのもいいかもしれません。
そんなときは公的機関である「キャリア形成・学び直し支援センター」を活用するのもいいでしょう。転職エージェントを使う前に「自分に気づく」そして「現実に気づく」という体験をしておくと、時間に追われている転職エージェントともスムーズにコミュニケーションが取れるでしょう。

さて、このドラマ、まだまだ語りたいことはたくさんありますが、今日はこのあたりにさせてください。ただ、個人の才能と仕事のマッチングによって、みんなが幸せになる未来へのヒントがるドラマだとおわかりいただけたら幸いです。また、このドラマを通してご一緒にあなたの物語を考えてみましょう。
 

写真:Shutterstock
文/杉山崇

 

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