指揮官・栗山英樹の「心がけ」

 
 

ちょうど1年前のWBCで、侍たちを指揮官としてまとめ上げ、世界一へと導いた栗山英樹監督(当時)は大きな注目を集めました。ベテランも若手も区別なく尊重し、活躍を信じて疑わない。栗山監督が寄せる選手への「揺るぎない信頼」は、監督インタビューでもたびたび感じ取れるものでした。そんな“真摯な指揮官”の姿に、新時代のリーダー像を見出した人も多いかもしれません。

栗山さんがこのたび上梓した『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』には、こんな言葉が綴られています。

「やっぱり人なんだ」

勝負に勝つために、人の心を動かすために、栗山さんが日々大切にしていること。それは、実はキャスター時代に得た学びが大きく影響しているそうなのです。

100回以上渡米して取材、「忘れられない」言葉

写真:Shutterstock

プロ野球選手引退後、様々な番組でキャスターを務めてきた栗山さん。アメリカのメジャーリーグ、マイナーリーグも取材するようになり、なんと100回以上渡米して取材を重ねたといいます。もちろん、アメリカでの取材は高額な費用がかかるため、より有意義な取材を行えるように自ら企画書を書き、番組に提案もしていたのだとか。

そうしてアメリカの大リーグの仕組みを自ら学び、取材を幾度も重ねる中で、栗山さんはますます野球が好きになっていったのだそうです。

中でも、栗山さんが「忘れられない」と振り返るのが、ノーラン・ライアン選手のインタビューでした。メジャーリーグを代表するピッチャーの一人であり、27年にわたってメジャーでプレーしたノーラン・ライアン選手は、栗山さんの「あなたの考えるメジャーリーガーとは?」という問いにこう答えたといいます。

「メジャーリーグとその下部リーグのマイナーリーグの違いは、年俸や待遇に差があることではなくて、人に影響を与えられるポジションかどうか、ということなんだ。

メジャーリーガーは、子どもたちに尊敬されるような行動を心掛けなければいけないし、そのために自分を律する必要もある。たくさんのお金ももらえるし、スターという地位も得られるけれど、その代わりにメジャーリーガーとしての責任を果たさなければいけないんだ」
 
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