皆様、20代の頃に買った服、手放さずにどれくらいお持ちですか? この連載を通しでお読みいただいている方は、そろそろお気づきかもしれません。そう、私のワードローブ内のアイテムたちが着実に“セルフ・ヴィンテージ”に熟成され始めております。
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今回は、時代に寄ってこられた服のお話。
こちらは20代の頃に購入した、ベルンハルト・ウィルヘルムのブラウス。ベルハルトはベルギーの名門校・アントワープ王立芸術学院を主席で卒業したドイツ人デザイナーです。私が20代だった頃、この王立芸術学院を卒業したデザイナー6名が「アントワープ・シックス」と呼ばれ、大ブレイク。当時、「日本には入ってこないレアアイテムを求め、アントワープまで行ったっけ……」というくらいハマッていました。そう、私、このアカデミー出身のデザイナーさんの服がその頃から大好き! マルタン・マルジェラ、ドリス・ヴァン・ノッテン、アン・ドゥムルメステール、ラフ・シモンズ、ヴェロニク・ブランキーノ……名前を挙げたらキリがありません。
そして、20代の頃、アントワープフィーバー渦中にて購入したのが、今回着用しているブラウスです(ベルンハルト・ウィルヘルム。今は奇抜なデザインが目立ちますが、当時はそれなりに着られるデザインも多かったんです)。
意気揚々と購入したものの、当時は上手に着こなすことができず、たまにある知人の結婚式2次会などのカジュアルなパーティで着用するにとどまっておりました。でも、とても大好きなデザインだったので、手放すこともなく……
そして、時は来ました。
自分で言うのも何ですが、当時より、なんだか似合うようになった気がするのです。年齢を重ね、首や肩のラインの肉がそげ、顔の輪郭が少しだけシャープになってきた私(若い頃は、それこそこのブラウスの袖のように顔がパーンと“まん丸”だったんです)。袖と顔がまん丸……上半身にボールが3つ並んでいるようなものですから、たぶんしっくりとこなかったのですなぁ(遠い目)。
そして、袖で思いっきりデザイン性を主張するブラウス。どことなく今年のトレンドのど真ん中になっているような……??? いきがった当時の自分を象徴している“とんがりデザイン”が、「こんなふうに時代のメインストリームに踊り出ることもあるものだなぁ」としみじみと。
だからこそ、「自分の好き」にはストイックに! 「誰かの好き(時にそれはトレンドという魔物)」というすぐに魔法がとけてしまうアイテムに気持ちを惑わされることなく、これからも「自分の好き」を大切にしていければと思います。「自分の好き」にトレンドが寄ってきたと思う状況を目の前に、「時代が勝手に寄ってきた」と言いながら、ちょっとだけ得意げにセルフ・ヴィンテージを着る快楽。「これぞ、年齢を重ねたからこそのファッションの楽しさだなぁ」と思うわけなのです。
CREDIT :
ブラウス/ベルンハルト・ウィルヘルム
デニム/MM6 この日と同じ
バッグ/グッチ この日と同じ
靴/コンバース この日と同じ
大森葉子
主にビューティ担当。「今日は夏休み?」と聞かれてしまうほどの“ど”カジュアルと「今日は何かあるの?」と聞かれてしまうほどのデザイン性のある服が好き。ほぼ“一目惚れ”買い派。