前回「ファッション編」で、おしゃれのプロならではのミニマム、かつ効率的なクローゼットの作り方を指南してくださった熊倉さん。後編では、自己肯定感を高める方法や苦難の乗り越え方など、熊倉流の“毎日を楽しく幸せに生きるヒント”を語っていただいた。

【熊倉正子さん インタビュー】<br />「マイ・スタイル」を築く方法<br />ライフスタイル編_img0
熊倉正子 1959年生まれ。1987年に日本で初めてラグジュアリーブランドの専門PR会社「KIC」を立ち上げ、「ポール・カ」、「エキプモン」、「クリスチャン・ルブタン」、「マルニ」など数多くのブランドを日本に紹介。2000年、世界的なカリスマスタイリストで当時、仏ヴォーグ編集長だったカリーヌ・ロワトフェルドに請われ、仏ヴォーグ誌のディレクターに就任する。その後、グッチグループのブランドのディレクターに転身。アレキサンダー・マックイーン社在籍時に、英国キャサリン妃のウェディングドレス契約業務を一任される。2017年アイウェアブランド「mEeyye」を設立し、世界初のファッションプログレスリーディンググラスを発表。MATCHESFASHION.COMで販売中。
 


目標は低く(笑)、小さな達成感を積み重ねて

日々、家事に仕事にと全方位で頑張っているミモレ世代。決して人生をサボっているわけではないのに、追い求める理想にはまだ遠いと厳しい評価を下してしまうばかりで、なかなか自分のことを認められないという人も多い。そのいっぽうで、「私は自分が好き」だと自著で明言している熊倉さん。そんな風に自己肯定感を持つことができたら、どんなに毎日気分よくハッピーに過ごせるだろう。熊倉さんに自分を好きになるための秘訣を伺ってみた。

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「まずは自分に誇りを持つこと。そのために必要なのは、“達成感”なんじゃないかしら。だからといって、何も大きなことを成し遂げなければいけないというわけではないんです。たとえば私の場合は、50歳の手前で始めてから日課にしているジョギングで日々、小さな達成感を感じていますよ。『今日はいつもより30秒長く走ることができた』、『1㎞先まで行けた』etc…….という具合にね。そういう些細なことでいいんです。自分なりに何か一つでも達成できたと思ったら、その都度きちんと自分を誉めてあげる。その積み重ねが、いつしか大きな自信となって、自分に返ってくるものなんですよ。とくに日本の女性は、みんな頑張り屋さんで自分に厳しいのよね。でも、私のように日常の小さなことにもokを出せるようになれば、もっと楽に生きられるようになるはずです。だからみなさんにぜひお勧めしたいのは、『目標は低く持て』ということ(笑)」


辛いことは、神様がくれた
“チャレンジのチャンス”

人生に困難がやってきたときにも、そうした前向きな考え方でいつも山を乗り越えてきた熊倉さん。

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「何か辛いことが起こったときには、『いま神様がチャレンジのチャンスを与えてくれている。これをクリアしたら次にもっと素晴らしい機会が待っているのに違いない』と思うようにしているんです。私は人生の行程を階段に例えて考えることがあるんですけれど、長い階段を上るときに上の方を見て、『まだあんな先まで行かなければいけないのか』と思うとうんざりしてしまいますよね。でも、目の前の1、2段を見て一生懸命に進んでいれば、案外あっさりと上りきることができてしまう。しかも『上り終わったらどんなにいいことが起こるんだろう』と思えば、階段を上っていることも苦にならなくなるし、それどころか『よし、もう少し頑張ってみようか』とさえ思えたりして。人生も同じようなもので、要はすべて考え方次第だということ。幸せに生きられるかどうかも、すべて考え方につきるといっていい。だって、『今あなたの幸せ度は75%です』なんて個人の幸福指数を測るような機械はどこにもないでしょう(笑)。それなら自分が決めてしまえばいいだけのこと。不幸だと思えば不幸になるし、幸せだと思えば幸せになるものなんです」


美しい空や澄んだ空気
幸せはいつも身近なところにある


そんな熊倉さんがしみじみと幸福感を感じる“幸せの種”は、何気ない日常の暮らしの中にあるのだという。

「年末に向けてポルトガルに引っ越しをする予定なのですが、そこはワイナリーがほど近くにある自然の豊かな場所。とくに今にも降ってきそうなほどのたくさんの星が美しく瞬いている夜空を見上げていると、『ああ、生きていてよかった』と幸せをひしと実感します。いつでもそこにあって、誰もが平等に眺めることのできる自然の光景の美しさ。そういうもので心を満たすということが、どんな高級品を手に入れるよりも幸せなことなんじゃないかと私は思うんです」

 ファッションのポイントになる
リーディンググラスのブランドを立ち上げ 

自分の身に着けたいものがなく、周りの知人にも同じような意見を持った人が多かったということから一念発起し、ブランド『mEeyye(ミー)』を立ち上げた熊倉さん。プログレッシヴレンズ(遠近両用のレンズ)とサングラスの機能を兼ねたリーディンググラスは、一見、老眼対策とは分からないほどスタイリッシュなデザインが魅力。現在は4型で海外のショッピングサイトのみで販売中だけれど、本格的な日本での展開が待ち遠しい!

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熊倉さんの装いのアクセントになっているリーディンググラスは、老眼鏡のイメージを一新してしまうほどおしゃれ!


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<新刊紹介>
『無駄のないクローゼットの作り方 -暮らしも生き方も軽やかに-』

熊倉正子著 1300円(税別)

元仏「VOGUE」のカリスマ編集長、カリーヌ・ロワトフェルドにも「マサコにどうやったらなれるのか知りたいわ!」と言わしめた日本女性、熊倉正子さん。「服で損をする日本女性、服をうまく活用するフランス女性」「高くても体型に合わない服はゴミと同じ」「黒のパンツが似合う人はほとんどいない」など、欧米のファッション事情に精通する著者ならではの、独自の美意識に基づく大人の女性のおしゃれ、そして暮らし方のヒントが満載です。

撮影/横山順子 取材・文/河野真理子 構成/川端里恵(編集部)