米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。
映画には、これまで知らなかった世界を教えてくれる役割がある、って思ってます。今回、『サラの鍵』を観てはじめて知ったのは、1942年にナチス占領下だったとはいえ、フランス国家がユダヤ人の迫害に直接手を貸していたという事実。
なぜユダヤ人であるというだけで、家族から引き離され、こんなにも過酷な経験をしなければならないの? トイレもなく水も与えられない環境で大勢の人が耐え切れず、自殺したりして死んでいくんです。
映画を観終わって、私の胸に浮かんできたのは「人間って恐ろしいな」という憤りでした。パリ中から集められたユダヤ人が収容された屋内競技場は、マレ地区にあったんです。マレ地区って今はおしゃれな街ですよね? かつてそこでこんな悲劇があったなんて……。
ある意味、本当は隠したいであろう自国フランスの過去をこうして映画にしたことは、勇気ある行為だと思う。そう考えると、これはとても前向きな映画。残酷なシーンもあるけれど、主人公の女の子や風景の描写はかわいかったり美しいですよ。映画館ではぜひパンフレットも手にとって、“知ったこと”を、さらに深めることをおすすめしたいですね。
このページは、女性誌「FRaU」(2012年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。
『サラの鍵』
夫と娘とともにパリに暮らすアメリカ人記者のジュリアは、1942年にパリで起きたユダヤ人迫害事件について調べていた。夫の祖父母から譲り受けたアパートのかつての住人が、アウシュビッツに送られたユダヤ人家族だったと知る。調査を進めるジュリアは、弟を納戸に隠したまま収容所へと送られ、脱走を試みた少女、サラの足跡を追いかけるが……。