『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』12月23日(土・祝)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!©HEELS ON FIRE LTD 2017

若い頃よりもなぜか足にフィットするようになった、マノロ・ブラニクのシューズ。昔は飾っておくだけでも、という思いで手に入れたこともあったのに、年齢を重ねるとそんなうれしい変化もあるんですね。10年ほど前にニューヨークで購入した迷彩柄にクリスタルがあしらわれたミュールは、今も大切にしている一足。女性の脚をきれに見せてくれて、時代が変わっても世界中の女性たちに愛されるブランドであり続けているのはなぜなのか。『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』を観て、その秘密がわかったような気がしました。

このドキュメンタリーに登場するマノロはちょっと飄々としていて、会話もどこかユーモラス。つかみどころないキャラクターのようにも見えますが、彼を慕う人たちのインタビューからは、誠実な人柄が伝わってきます。ヴォーグ編集長のアナ・ウィンターやリアーナをはじめ、その面々はとても豪華で個性的。窮地に陥っていた頃のジョン・ガリアーノに手を差し伸べたエピソードも紹介されていて、みんながマノロを大好きになる理由もよくわかりました。

先日、仕事でオーストラリアへ行った際に、ハーバーブリッジを背に記念撮影。向こうは夏だったので半袖です!

チョコレートの包み紙でトカゲに靴を作っていた少年時代から、海や街の景色に影響を受けて靴作りにすべてをかける現在まで、インスピレーションの源に触れるような好奇心を刺激してくれるドキュメンタリー。彼の人生を追いかけることで、パリ、ロンドン、ニューヨークと時代によってファッションの最先端が移り変わってきたことが自然と理解できるような、エンターテイメント性のある構成にも引き込まれました。

そうそう、今度美術館に行ったら、マノロのように絵画を脚から見てみたら楽しそう! という新たな発見も。絵画のなかの人物が履いている靴を見るだけで、時代や性格がわかりそうですよね。美術鑑賞はどちらかというと苦手な私ですが、次に美術館を訪れるときには試してみようと思っています。気になったのは、マノロ本人はどこのブランドのシューズを履いているのだろう!? ということ。自分の木型でオリジナルのものを作っているのかな……? もしもご存知の方がいたら教えてください(笑)。

さて、今年スタートしたこの連載も、年内最後の更新になります。今年はミュージカル『シカゴ』のロキシー・ハート、ドラマ『ドクターX』の大門未知子と大好きな役をふたつも演じることができて、私にとって最高の一年になりました。来年はリセットして、新しい目線でまた目標を見つける年になりそうです。仕事でもプライベートでもスキルアップを目指して、自分ができることから一歩一歩進みながら、海外へも違うアプローチをしていけたら、と考えています。みなさまも体調に気を付けて、よいお年をお迎えくださいね。来年もここでお会いできることを、楽しみにしています。

『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』
1970年代のデビュー以来、ファッショニスタから熱狂的に支持されてきたシューズブランド、マノロ・ブラニク。デザイナー、マノロ・ブラニク自身はイタリア・ミラノの工房でブームを冷ややかに眺めながら、“夢の靴”を制作し続ける。一風変わった思考プロセス、ため息がでるほど美しいスケッチ、ガーデニングをこよなく愛する美意識に彩られたプライベートまで、マノロの魅力に迫るファッション・ドキュメンタリー。12月23日(土・祝)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー。

構成/細谷美香