1980~90年代、たくさんの服を買うことがおしゃれだとされていた時代に「ワンシーズンの服はラック1本分で十分」といち早くミニマルなワードローブを提案し、日本の数々の女性誌で旋風を巻き起こした熊倉正子氏。その後2000年に世界的なカリスマスタイリスト、カリーヌ・ロワトフェルド氏に請われてパリに渡り、仏「VOGUE」、「GUCCIグループ」のディレクターを歴任。卓越したファッションセンスとビジネスの手腕から“伝説のマサコ”と一目置かれる存在に。
そして今回、根強いファンの要望に応え、初めての著書『無駄のないクローゼットの作り方 暮らしも生き方も軽やかに』を書き下ろしました。
昨年のインタビュー記事の大反響を受けて、これまでの服が似合わなくなってきた、何を着たらいいのかわからない、と”おしゃれ更年期”に陥りがちなミモレ世代の女性に向けて、“ちょっと辛口、目からウロコ”のアドバイスを贈ります。今日から全3回連載でお届けします。
黒のパンツは足を短く見せてしまいます。
まず、あえてお伝えしたいのが、ファッションにおいて、「黒は万能ではない」ということ。どの色よりも無難なように思えて、実は素敵に着こなすことがこれほど難しい色もないのではないかと思う。
クローゼットの中に、黒いパンツがあるという女性は、おそらく相当数いるでしょう。もしかしたら80%くらいの日本女性は、この黒パンツの力に頼っているかもしれない。でも黒パンツを着こなせる女性って、実はかなり少ないというのが現実なのです。
まず、よほど長身で足がすらっと長い人でない限り、黒のパンツは足を短く見せてしまいます。
フィギュアスケートの選手がなぜ足元までベージュで覆うかというと、それは脚を長く美しく見せるためですよね。あれが黒だったら下半身はぐっと重く、そして短く見えてしまうことでしょう。
また、これだけコントラストの強い色を、上手に着こなすというのは、至難の技なのです。脚のラインもしっかりと浮き立ってしまうし、コーディネートでなじませるのもなかなか難しい。さらに素材感の良し悪しも如実に出てしまう手強い色。
それから、何にでも、そして誰にでも似合うという思い込みのせいか、黒のワードローブをじっくりと吟味せず手に入れてしまい、「なんだか垢抜けない」という状況に陥ってしまっている人も少なくない。
他の服とコーディネートしやすいベーシックカラーのボトムが欲しいのであれば、ネイビーやグレーの方が格段に着こなしやすいと思います。
黒は確かにミステリアスでとても魅力的な色だけれど、私のワードローブの中に黒いものはほとんどありません。白く透き通るような肌ならまだしも、日々の運動のおかげでこんがり日焼けした私の肌には、黒は似合わないし、いっそうくすんで見えます。それに小柄な私が黒を着ると、それをさらに強調してしまうというデメリットも。
「無難だから」という理由で、服を選ぶのをやめることです。それが、あなたに本当に似合う服に出会う、そしてお洒落になるための近道だから。
<新刊紹介>
『無駄のないクローゼットの作り方 -暮らしも生き方も軽やかに-』
熊倉正子・著 講談社 1300円(税別)
「お金も時間もかけているのに、日本人女性はファッションで損をしていてもったいない!」と欧米ファッション界が一目置く”伝説のマサコ”が、本当におしゃれになるためのワードローブの作り方、装い方を、理論的かつ具体的に指南します。
「おしゃれになりたいなら黒のパンツはやめる」「ワードローブは1本のラックにかかる量だけで十分」「いつも同じような服なのを怖がらない」など、独自の美意識と合理的なロジックに基づく、これまでにない大人のためのレッスンです。
そして実践すると、クローゼットが整い、毎日の服に迷いがなくなるだけでなく、暮らし方、生き方もどんどん軽やかに、シンプルになっていくのがマサコ流哲学の真骨頂です。
これまでの服が似合わなくなってきた、何を着たらいいのかわからない、と”服難民”に陥りがちな大人の女性、必読です。
・第2回「手持ちの服を棚卸しすればもう服に悩まない!【熊倉正子さんのおしゃれレッスン②】」はこちら>>
・第3回「フランス女性に学ぶ顔のシワとりより大切なこと【熊倉正子さんのおしゃれレッスン③】」はこちら>>
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