上映時間は2時間半近くあるし、救いがあるかと言われればないかもしれない。実話をもとにしたヘビーな映画なのですが、今だからこそぜひみなさんにも観てほしいな、と思った作品を紹介しますね。
舞台は、黒人による大きな暴動が起こった‘67年のデトロイト。その暴動の最中に黒人の若者がふざけておもちゃの銃を発砲したことではじまる悲劇が描かれているんです。
銃声を聞いたという通報を受けて、モーテルに突入した人種差別主義者の白人警官は、逃げようとしただけの黒人青年を射殺。
その警官は正当防衛を主張して、ザ・ドラマティックスというR&Bグループのリードシンガーをはじめ、その場にいた黒人青年や白人の女の子たちを“容疑者”にでっちあげようとするんです。
その白人警官、尋問をはじめるのですが、もうこの人の顔が本っ当に小憎たらしいのっっっ!
ここまでしつこくて暴力的な尋問をするなんて、サイコパスなんじゃないかと思うほどなんだけど、そうじゃなくて差別主義者ってこういう人たちなんですよね……。
あなたが同じように差別されて、同じようにひどい尋問を受けたらどんな気持ちになるか想像してみてよ! と怒りがわいてきちゃいました。
でも映画を観終わって少し冷静になってから、人にここまでの気持ちにさせるなんて、演じた人がものすごく上手だったからなのかも、と彼の名前をさっそくチェック。
ウィル・ポールターという‘93年生まれのイギリスの俳優さんだそう。気になる俳優がまたひとり増えました。
監督はイラク戦争の爆発処理班の兵士が主人公の『ハートロッカー』、ビンラディン捜索を題材にした『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー。
私は実話ベースの映画が好きということもあって、監督のこれまでの作品も全部好き! どの作品にも共通しているのは、冒頭から最後までこれってもしかしてドキュメンタリーなの!? というくらいのものすごい臨場感があること。
それがずっと続くから心臓がバクバクしっぱなしになって、まるでその場で起きていることに自分が巻き込まれたような感覚になるんですよね。
『デトロイト』のラストを見届けて思わず口から出たのは、「生きててよかった」。暴動や尋問から自分も生還したような気分になって、そんな言葉が出たんでしょうね。
お酒を飲んでゲーム感覚でおもちゃの銃を鳴らしただけのことが、とんでもなく大きな事件につながってしまう。こういうことはただの過去の話じゃなくて、今でも起こることだし、肌の色で差別される現実は変わっていないんだな、って思います。
ブロードウェイに出演したときも色々なことを目にして、どうして神様は人間の肌の色を変えたんだろう、と思ってしまった瞬間もありました。車が空を飛ぶような時代になっても、差別はなくならないのかな……。でもこういう映画が作られるということ自体が、未来を変えるかもしれないとも思うんです。そういう意味で、『デトロイト』はたとえ苦しくても観ておいたほうがいい映画だと思います。
『デトロイト』
1967年7月、暴動発生から3日目の夜、若い黒人客たちで賑わうアルジェ・モーテルに、銃声を聞いたとの通報を受けた大勢の警官と州兵が殺到した。そこで警官たちが、偶然モーテルに居合わせた若者へ暴力的な尋問を開始。やがて、それは異常な“死のゲーム”へと発展し、新たな惨劇を招き寄せていくのだった…。2018年1月26日(金)、全国ロードショー