編集長を辞める理由と
息子を送り出す理由は同じです

5月27日の日曜日、中学1年生の息子、リオが渡米するので、空港まで送りに行ってきました。彼が「中1になったら海外留学したい」と言ったのは、5年生の時。2年間、その思いは変わらず。小学生から中学生になり、環境が変化しても、1度も気持ちが揺らがなかったのはすごいなあ、と傍で見ていて思います。

なかなか思いや気持ちを言葉にすることが苦手な男の子なので、留学を目指した確たる理由はわからないのですが、彼の視線はもうすでに広い世界へ向いているようです。夫がベネズエラ人(米国籍も保有)のダブルアイデンティティである彼は、日常会話程度なら英語も話せます。海外の渡航歴も20回を超えていて、それは国際結婚でつながる我が家の特徴だと思います。だからこそ、の決断だったのかもしれません。

出発前に、実家の両親も含めた家族で、メッセージを寄せ書きし渡しました。

そこで私が書いたのは。

まず、彼が自分で決めた進路を全力で応援するということ。
あなたの人生は、もちろん始まったばかりだけれど、すべてが選択と決断の積み重ねで。
それは、大人も子供も関係なく、すべての人に与えられた権利です。
とても大きな選択と決断を、今できたことを誇りに思うと伝えました。
アメリカで学ぶことは、語学と言うツールではなく、
この世界にはたくさんの価値観があるということ。
その価値観をきちんと俯瞰で見、他人をジャッジせず、比較せず。
性別や国籍や、肌の色や宗教や。そんなことで人と人との間に壁を作らないこと。
今12歳のあなたが、今後100年生き続ける「新しい世界 new world」を作ってほしい。

実は、このメッセージは私がミモレの編集長を辞める理由と同じです。

私たちが生きている社会は、たくさんの考えや思いがありますが、それを、様々な記号で縛ろうとしてしまいます。例えば年齢や国籍、性別、自分が置かれている環境などで。「大勢」が常識であり、それ以外は非常識――は全く違います。そして、他人と較べたり、他人を自分の記号で判断することは、とても不幸なことだと思います。ミモレは、隣の人と較べなくても済む。隣りの人を自分の「常識」でジャッジしない社会になれば良いなあ、とスタートしました。女性、という性は、もともと「協力し合う」性と言われています。男性が狩りに出た後は、女性たちが協力し、子供たちを守り、自分たちを守ったのです。私たちが助け合い、理解し合い、そして認め合えば、絶対に社会はもっと良くなる。そして、この新しい価値観が、今後100年残っていけば、私たちの後の時代に生きる人たちはもっと楽になるなあ、と。

メディアは生き物で、変化し、成長しなくてはいけません。価値観や考え方も、広くたくさん吸収したほうが良いのです。私のそれは、創刊準備から入れて4年弱で、きちんと反映してもらったと思っています。また、違う風を入れていく時期に入りました。大森の生き方や、彼女が生きてきた中で感じたこと、嫌なことも嬉しかったことも、すべてがミモレの価値観を広げていくことになると思います。

小さな世界に生きることなく、あ、それは海外に行きましょう――ということではなく、周りに張り巡らせたボーダーを1つずつはずし、風通しが良い場所を自分で作っていきましょうね。

大草 直子

  • 出発前の1枚。末っ子、怒っています(笑)。何で怒っていたのかわかりません。もしかしたら、喧嘩ばかりしているお兄ちゃんがいなくなることが、寂しいのかもしれません。
  • まだこの時は、大丈夫。最後、寄せ書きを渡し、「I am so proud of you」と伝えたら涙が。もちろん母さんは号泣。