この連載もスタートから1年を迎え、多くの方々に愛用の時計をご紹介いただきました。ただ本当は、取材のお願いをするたびに、いつも少しだけ後ろめたい気持ちになることが。そう、実は、私自身は時計を持っていないのです。
もちろん、時計が嫌いなわけではなく、特に女性誌に時計ブームが到来していた若い頃は、時計関連の仕事をいただくこともしばしば。撮影のたびに数百万円という美しい時計に触れていたことで、むしろ、自分には縁遠いアイテムと感じるようになった気もします。それが、40歳を過ぎたあたりから、あらためて時計熱がぐんぐんと。その後、この連載が始まり、10年、20年と時計を愛用し続けるエピソードを伺ううち、やはり時計は“自分のスタイルの核”にもなり得るアイテムなのだと再確認。私も、理想の女性像を託せるような、そんな時計を見つけたいと思うようになりました。
肝心な“理想の女性像”とは。年々、女性らしさがこぼれ落ちていく感覚を覚えるなか、自分が何よりも大切にしたいのは、やはり女性としてセンシュアルであることです。その内訳をひとことで言い表すのは難しいですが、もちろんエロおばさんになりたいわけではなく。めざすセンシュアリティに欠かせないのは、人としての品のよさ。そして、センシュアリティとは、本来は本能に繋がるものだと思うので、それを表現するには強さも必要かもしれません。
そんなことを思いながら、時計の試着に伊勢丹へ。気になっていたものは端から試着してみましたが、本命として考えていたブランドは、その人気の高さゆえ、つい、誰かの顔が浮かんでしまい、しっくりきません。ずっと憧れていた時計ブランドは、私が着けるとどうも堅い印象に。また、予算の許す範囲でダイヤ入りにしようと思っていたのですが、それも実際に着けてみると、普段の着こなしのなかでは、時計だけが目立ってしまいそうでした。
予想外にも、最もイメージに寄り添ってくれたのが、ブシュロンの「リフレ」。ブシュロンは、たまたま別の仕事でブランドストーリーを見直していたばかりで、先見の明ある革新性や彫金技術に代表される高度な職人技、クラシックとモダンのバランス感覚に優れたデザイン性など、あらためてブランドの魅力を感じていたところでした。「リフレ」は、そんな理由で何気なく試着したのですが、鏡を見ると最初からピンと来るものが。ケースにあしらわれたダブルゴドロンの装飾が、ストライプの畝を走るきらめきのなかに、女性らしい艶を表現してくれています。サイズ感も重要で、私の手首には少し大きめのミディアムが、モダンな強さを添えるカギに。また、後から調べてわかったのですが、「リフレ」はもともとメンズとして誕生したそう。もしかしたら、その“男性を着飾るための華やかさ”が、私が欲しかった“甘くない女性らしさ”と上手く重なったのかもしれません。
さらに、試着して初めて知りましたが、ストラップは自分で着脱できるチェンジャブル式。1本のストラップをケース両脇から装着する仕組みで、バックルがないため手首の内側もすっきり。ベルト穴もないので、ストラップ自体も傷みにくいそうです。本来は2WAYやチェンジャブルのようなアイテムは、どっちつかずな気がしてあまり好みではないのですが、時計は長く愛用したいアイテムであること、また、もともと数年に一度はストラップ交換することを考えれば、好きな時に替えられるのはやはりありがたいですね。そして最後にもうひとつ、ショップの方に教えていただき、ときめいたことが。この時計、ケースのガラス部分に息を吹きかけると、ヴァンドーム広場を象徴するモチーフが浮かび上がるのです。そのエスプリ、儚さ、息を吹きかけるという仕草・・・、なんとも色っぽいではないですか! そんな遊び心は、私が目指す“センシュアリティ”に関係あるのか、ないのかわかりませんが(笑)、最後にきゅっと心を掴まれたのは間違いありません。
CREDIT:
〈メインカット〉
プルオーバー/チノ
ピアス/アデル ビジュー
藤のバングル/アデル ビジュー
黒いバングル/アッシュ・ペー・フランスで購入
〈サブカット〉
Tシャツ/カルバン・クライン ジーンズ
ピアス/ノーブランド
ネックレス/マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック
バングル/エディー・ボルゴ
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