ストリートブランドのデザイナーがパリのトップメゾンのアーティスティックディレクターにいきなりの大抜擢。さらに、初のアフリカ系アメリカ人。
2019年春夏パリ・メンズ・コレクション。屋外にダイバーシティの象徴ともされるレインボーカラーのランウェイが作られました。6月21日、ヴァージル・アブローによる初めてのルイ・ヴィトンのコレクションが発表されました。
オールホワイトのルックを着こなすのは皆、黒人モデルというのが印象的なショーでした。そして、どんどんカラフルになっていき、レインボーカラーのアイテムへと展開。キャッチーな小物たちも多数。感度の高い若者たちがきっと飛びつくんだろうな〜。
時代が変わる!
ライブ配信を見ていたのですが、感覚的にすぐにそう思えたショーで、かなり興奮しました。
「新たな権力層が興りつつあると感じています。主張を強く持つなら、今がそのとき。線は交わっています。シャツはもうじゅうぶんに売れたし、Instagramの投稿も生態系を変えるにじゅうぶんな数が成されました。もう戻ることはできません(i-D『変わりゆくファッションの生態系』より)」と彼はインタビューに答えたことがあったそう。
ストリートとラグジュアリーの融合という意味を超え、人種やジャンルの壁をも瓦解。若者の欲望やニーズそのものを表現し、類いまれなるセンスで、ファッションをより自由でオープンな垣根のないものに転換。それをルイ・ヴィトンというトップメゾンでやってのけたヴァージル!
ショーのハイライトはなんといってもこのシーン。ショーの最後にランウェイを歩いてくるヴァージルは、一直線に苦楽をともにしたであろう同志であるカニエ・ウェストのもとへ。泣きながら抱き合う2人。フロントロウに座った恩師であるアーティスト村上隆氏がその様子を動画にしっかりとおさめてくれました。いつもはクールそうなヴァージルだけに、これまでのプロセスで遭遇した障壁の高さ、計り知れないプレッシャーがあったであろうこと、やりきった安堵感などがしのばれ、私も涙。
モントリオールでは、ヴァージルの展覧会が開かれています。「このプロジェクトでは、僕の脳内世界を展示して、僕の創造がどれだけカオスで、どういう風に整理されているかを見せるものなんだ」とヴァージル。(レベル感は全く違うけれど)脳内カオスの自覚がある私としてはこの目で拝みたすぎる!
(話を戻しまして)ヴァージルがヴィトンのショーの後に自身のinstagramに投稿したのは、祝福の拍手の中、泣きながらランウェイを歩く自分の後ろ姿でした。そこには、『you can do it too…(きみにだって、できるよ)』のキャプションが。
「買えないから」「興味ないから」「メンズだから関係ない」なんて、もったいない!
ラグジュアリーブランドをチェックすることは、決してショッピングのためだけではないと思うのです。グローバル展開するトップ企業が誰にどのような発信を託すのか。そのアーティストは時代のムードをどのように創出し、発露するのか。そのメッセージを自分はどう受け止めるのか……
ルイ・ヴィトンのショーウィンドウにヴァージルのコレクションがディスプレイされる日が私は今からとても楽しみです。
今日のお品書き
「人気スタイリストのリレー連載 今週の、これいいね!」に、新しく長澤美香さんが参加! 洗練されたおしゃれでファッション業界にもファンが多い長澤さん。ミモレではどんな顔を見せてくれるのでしょうか? 今からとっても楽しみです。今日紹介してくれたブーツ、私も欲しいです(笑)。
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