私が取材した中では職場での「いじり」が辛くて転職をしたというケースも多く、実は取材時「転職活動中」とおっしゃっていた取材対象者2名から本の出版報告への返信に「その後、無事転職できました」というメールをもらっている。が、転職ケースでも大半は去った職場の何に悩み苦しんでいたのか、訴えることができないまま静かに職場を去っている。
こうした流れにより、ハラスメントは解決もしていなければ加害者側にも認識されていない。窓口を設置してさえいればハラスメント対策ができているというのは大間違いだ。窓口が機能しているのか、休職や転職の真の理由は何なのかを今一度確認してほしい。
労働人口が減少する中で、これまでのように24時間闘える人だけが残っていけばいいという態度を取っていれば、企業自体が人材難に陥る。離職や休職は残った人の仕事量を増やし、モチベーション低下も招く。こうした人の流出とそれに伴う悪循環を防ぐためにもしっかり対策をした方が経営上の利益もあるはずだ。
真のダイバーシティマネジメント
2点目は、ダイバーシティの観点から。経営学では、属性(女性男性や人種など)の多様性よりも、経験・価値観などの多様性が高いことが組織のパフォーマンスを高めるという研究結果が出ている1。
「いじり」のようなプライベートに介入したり人を見た目で嘲笑するようなハラスメントが多ければ、外国人をはじめ、多様な働き手にとって魅力ある職場にはならない。逆に文化、宗教などの多様性が様々な軸で存在しているような企業では、無神経なやりとりが減ることも想定される。
そして、せっかく多様な人がいても、それぞれの価値観や経験を生かした視点を発言したり行動に移したりできず、マジョリティの人(日本企業の場合多くは日本人・男性・生え抜きの社員)に「同化」していては意味がない。
1 THE ROLE OF CONTEXT IN WORK TEAM DIVERSITY RESEARCH: A META-ANALYTIC REVIEW” APARNA JOSHI HYUNTAK ROH University of Illinois at Urbana-Champaign (2009)、“The Effects of Team Diversity on Team Outcomes: A Meta-Analytic Review ofTeam Demography” Sujin K. Horwitz and Irwin B. Horwitz(2007)など
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