父も母も70代。札幌の大通公園の満開のライラックを背景に、私が撮った写真。おしゃれで美しかったふたりの幸せな時代。

私が家族の写真を飾るようになったのは、友人から贈られた写真立てがきっかけでした。「デジタルの時代だからこそ写真を飾るのが素敵だと思う」という言葉とともに。両親と3人で行ったレストランでの写真を入れて机の上に置きました。

その後、両親が年齢を重ねていくと、会う度にその変化を感じずにいられませんでした。私はできるだけ日々の瞬間を写真にとどめようとし、特別な一枚はプリントして写真立てに飾りました。母が亡くなった時、親しい方たちがシルバーの写真立てを送ってくれました。そこには、母が一番気に入っていた母の写真を入れました。

初めてイギリスに取材に行った時、どの家にもたくさんの家族の写真があることに驚いたものです。暖炉やチェストの上に置かれた写真立て。そこには、家族の歴史が凝縮されているようでした。

家族の写真がそばにあると、いつも見守られているような安心感を覚えます。父も母も幸せな時間を重ねて来たのだと、その満ち足りた表情を見て確信することができるのは、何という慰めでしょうか。写真立てに限らず、インテリアは形だけのものではありません。生きること、暮らすことが形になったものなのです。

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【下田結花のブログ】
http://modernliving.jp/shimoda

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