みなさんは、ご自宅でどんなうつわを使っていますか? 海外のブランドの食器や親から譲り受けたもの? それとも雑貨店で一目惚れしたマグカップ? 40代ともなるとそろそろ作家ものの、長く愛用できるうつわを、と思っている方もいるかと思います。ただ数いる作家さんの中で、どなたのものを選べばいいのか分からない、というのも事実。うつわ好きが高じて『うつわディクショナリー』なる本を執筆した私、衣奈彩子がおすすめしたいのは、みなさんがこれまで使ってきた食器と並べても引けをとらない特別感がありながら、手仕事のやさしさを感じられるもの。もちろん使い勝手も兼ね備えます。そんな3人の作家さんのうつわをご紹介したいと思います。

安部太一さんの青いプレート 8000円(税別)

青いうつわは、野菜のグリーンもトマトソースの赤も、こんがり焼いた肉料理のブラウンも、意外なほど美味しそうに、その上、豪華に見せてくれる頼れる存在。料理が好きな人ほど、食材との色合わせを楽しみながら上手に使えるうつわです。安部太一さんのプレートは、アンティークのような存在感でテーブルが華やぎます。

伊藤聡信さんの白釉色絵長額皿 8000円(税別)

ふんわりと気の抜けた絵柄が魅力の伊藤聡信さんのうつわ。その絵は、模様を彫りこんだスタンプに色をのせてぽんぽんと押す「印判」という技法を用いて、ひとつひとつ手で施されています。大きめの角皿は、カルパッチョや生ハムの盛り合わせなどパーティメニューにも活躍。取り分けるうちに顔をだす絵柄に会話も弾むはず。

松本かおるさんの焼締めボウル 7000円(税別)

一見するとシンプルなボウル、だけど、乾いた大地のようなその質感がタイ料理やメキシカンなど多国籍な献立にびっくりするほどよく合って、たった一枚で異国情緒を演出してくれるうつわです。作っているのは、陶芸家の松本かおるさん。伝統ある備前焼の土と焼締めの技法を用いて、土本来のやさしい色味を生かしながら、現代的なフォルムのうつわを生み出します。

作家もののうつわを始めるなら、まずは一枚で主役になるものから手を伸ばして。盛り皿としても一人分の料理を盛り付けるお皿としても使いまわせるものがおすすめですよ。

衣奈 彩子(えな・さいこ)

フィガロジャポン編集部を経て独立。出産を機にふつうのごはんを美味しく見せてくれるうつわにハマる。人とうつわの関わりをテーマに日本のうつわ文化をほうぼうに楽しく伝えるべく活動。編著に『料理好きのうつわと片づけ』(河出書房新社)。うつわと食を愉しむ「UTSU-WA?」主宰。Instagram:@enasaiko

 

『うつわディクショナリー』
著者 衣奈 彩子 CCCメディアハウス 1600円(税別)

ウェブサイトFIGARO.jpの人気連載、「うつわディクショナリー」が書籍になりました。ライフスタイルを大切にする人たちの関心が年々高まっている、うつわ。なかでも、話題の作家によるうつわは、展覧会のたびに行列ができるほどです。
作家たちのうつわ作りの背景や思い、そして美しい写真におさめられた作品の数々。
また、知っておきたいうつわ用語と購入できるギャラリーやショップリストもまとめました。うつわと作家をつなぐ1冊として、ぜひ、お楽しみください。

(この記事は2018年9月1日時点の情報です)
文/衣奈 彩子 写真/米谷享
構成/片岡千晶

 


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